迷宮金魚

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2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    破婚の条件 溺愛の理由 5      破婚の条件 溺愛の理由 7 
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□ 破婚の条件 溺愛の理由 番外編 □

破婚の条件 溺愛の理由 6

 
 馬車に並んで座ったものの、どうにも眠い。ティアは目をこすってあくびをした。隣にいるルシアーノが小さく笑ったのに、恨みがましい目を向ける。

「……眠くなるって私、言いませんでしたか?」
「悪かった。だから、寝ればいいと俺は言ったのに」

 むくれてティアは窓の外を眺めるふりをした。そう言えば、いつからこんなに彼の前で素直に感情を出せるようになったのだろう。もっと甘えたいと思うし、こうしていたいとも思う。

「ティア……ほら、すねるな」
「すねていません」

 肩に腕が回されて、あっという間にルシアーノの方に引き寄せられる。彼の方に頭を預ける形になった。こんなことをされたら、ますます眠くなってしまうではないか。

 やっぱり昨夜は断るべきだったのかもしれない。せっかく二人で出かけているというのに、こんな風に眠っているのではつまらない。

 もう一度目をこする。眠さの方が先に立って、子供じみた仕草になっているのも気が付かなかった。

「俺も少し眠るから、君も眠れ――昨夜は夜更かししすぎたかな」

(……ルシアーノ様は嘘をついているわ。少しも眠くないくせに)

 けれど、それ以上はティアの方ももたなくて、素直に眠りに落ちた。
 
 ◇◇◇
 
 目を覚ました時には、日はだいぶ傾いていた。そっとティアは身を起こす。

(あら、本当にお疲れだったのかしら)

 ティアだけではなく、彼の方も眠りに落ちていた。だが、ティアが起き上がった気配で、彼も目覚めたらしい。

「よく眠れたか?」
「……ええ」

 二人が眠っている間も、馬車は御者の手によって走り続けていた。周囲の景色が、だいぶ変化していることに気づく。

「ああ、そろそろ着くな――ほら、あの向こうが湖だ」
「ずいぶん大きいんですね!」

 ルシアーノの側の窓から外を見るように促されて、ティアは目を見張った。建物の間から、湖がのぞいている。あまりにも大きくて、何も言われなかったら海だと思ってしまいそうだ。

 馬車を走らせている御者に向かい、ルシアーノはもう少し急ぐように命じる。やがて馬車が停まったのは、湖の近くにある宿だった。

 二人のために一部屋、それから御者のためにもう一部屋を確保し、ここまで急いでくれた御者には小遣いをやって、ルシアーノは「呑み過ぎるなよ」と命じておく。

 二人分の荷物を部屋まで運んだ御者は、ほくほく顔で出かけて行った。明後日の出発時間まで、彼は休みだから好きなように過ごすのだろう。

「まあ、可愛いい!」

 二人の部屋は、この宿で一番いい部屋だという話だった。壁には春の花々を散らした壁紙が張られ、ベッドカバーも枕もそれに色が合わせてある。置かれている家具は、屋敷にある家具ほどではないもののかなり品質のいいもので、きちんと手入れされていた。

 窓辺には、花の鉢が並んでいて、その向こう側に湖が見えた。もう夕方間近だから日はかげっているが、昼の間は日の光が差し込んで明るいだろう。

「こういう色合いも素敵ですね。次に寝具を新調する時は、こういう色も考えましょうか」

 淡い水色のベッドカバーにティアは手を滑らせた。今、屋敷で使っている寝具にこういう色合いのものはない。寝室が明るくなりそうで素敵だと思う。

「荷物を置いたら、一度出るぞ。歩きやすい靴の方がいい」
「わかりました。すぐに出しますね」

 散歩用のブーツを取り出して、それに履きかえる。靴を買う時に旅行用のドレスにも合うものを選んでいたから、問題はない。

 宿を出ると、正面に見える湖の方へと彼はティアを連れて行った。まだ暑さの残る時期だからか、靴を脱いだ子供達が浅いところで水遊びをしている。

「……すごいですね」

 湖に向きあって立つと、そんな言葉しか出てこなかった。湖だと聞いていたのに、向こう岸が見えない。湖にも水平線が存在することを初めて知った。

 湖の上を吹き抜けてくる風は、ひんやりとして心地いい。ティアは目を細めて、髪をなびかせる風を堪能した。

「間に合ってよかった――馬車を急がせて正解だったな」
「……まあ」

 日が沈んでいくにしたがって、空の色が変化していく。その色を映して湖面も変化していくのはとても幻想的な光景だった。

「去年は、ここに来そびれたからな。ティアにもこの景色を見せたいと思ったんだ」

 ティアの方には視線を向けず、湖の方を向いたまま彼は言った。沈んでいく夕日の色を映して、彼の顔も赤く染まっているように見える。横顔を見上げたティアは、鼓動が跳ね上がるのを感じた。

(……こういうのを幸せっていうのかしら)

 不意にそんな思いがこみ上げてきた。こうやって彼と一緒にいることができるのは、いくつもの偶然が重なった結果だ。たまたま彼が出征する時に、たまたまティア自身も縁談を探していた。互いの家同士にとって都合がよかったからというところからの始まりだ。

 始めて顔を合わせた時、彼がティアに抱いていた印象は最悪だったはずだ。それが今はこうして隣にいるなんて不思議な気がしてならない。

「どうした?」

 気がつけば、じっと見ているティアに気が付いたルシアーノがこちらへと視線を向ける。

「何でもありません」

 小さく笑うと、ティアは自分から彼の手をぎゅっと握りしめた。

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Date:2015/08/02
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