迷宮金魚

□ 蜜恋エンゲージ 一途な公爵の甘い誘惑 番外編 □

蜜恋エンゲージ 一途な公爵の甘い誘惑 番外編5

 
 この別荘に来てから何度も、イリーナはマティアスに抱かれているし、彼は十分にイリーナの身体を高めてくれていた。だから、彼が押し入ってきた時にも覚えたのは快感だけ。

「あっ……ん、あぁ……」

 イリーナは陶然として、彼の身体に腕を回す。ぴたりと身体を合わせて、根本までマティアス自身を受け入れたら、あとは彼の与えてくれる快感にただ、溺れるだけ。

 マティアスの方も、今日は余裕がないみたいだった。明るい中、イリーナの反応をつぶさに見ていたからかもしれない。

「ごめん、あまり長くもちそうもない――イリーナが、よすぎる――から――」
「やっ……ちがっ……違う……あ、ん!」

 いきなり最奥まで強く抉られたら、そこから先は何も考えられなくなる。今日のマティアスは、最初から余裕がないといった様子でイリーナを突き上げた。がんがんと激しく腰がぶつかり合う度に、全身を強い愉悦が走り抜けていく。脚の先までぴんと伸ばして、イリーナはより強い快感を求めようとした。

 広いベッドとは違う場所で身体を密着させているのは、いつもと違う感覚で、より鋭敏にイリーナを感じさせる。二人の動きに合わせて、ソファがぎしぎしと音を立てた。

「あっ――あぁっ、あぁぁんっ!」

 より奥へ奥へと彼を招き入れるように媚壁は蠢き、彼自身の形を覚え込もうとしているかのように締め上げた。

「いいよ――イリーナ、すごく――いい」

 奥を抉られる度にああ間の中が真っ白になっていって、何も考えられなくなる。嬌声を響かせて、イリーナは背筋をしならせた。

 ひときわ強く、媚壁が収斂する。それと同時に一番奥で、熱いものが弾けるのを感じた。

 * * *


 甘い時間を過ごした後は、余韻にひたりながらもイリーナはセーターを作る作業に戻ろうとした。だが、ソファに横になったマティアスは、座っているイリーナの膝の上に頭を乗せてしまい、肩から流れ落ちる髪に指を絡めては引っ張ることを繰り返した。

「だーめ。セーターが編めなくなってしまうでしょう?」
「そんなの、冬になるまでに編み上がればいいのに」
「それはそうかもしれないけれど……ルーカスにだって編んであげないといけないもの。二着編もうと思ったら、時間が足りないでしょう。大きくなっているから、あちこち採寸し直さないとだめね」
「ルーカスの分も?」

 弟の名前を聞いた途端、マティアスは弾かれたように上半身を起こした。

「当然でしょう? 今まで毎年編んでいたのよ? 私の最初の作品は、ルーカスのマフラーだったんだもの。今年からいきなり編まないというわけにはいかないでしょう」
「だめだよ、ルーカスの分なんて。君は、俺の分だけ編んでくれればいい」

 正面から、大真面目な顔をして彼は言う。その表情にイリーナはきょとんとしてしまった。

(まさか、ルーカスに妬いているのかしら?)

 ルーカスは弟で、マティアスは彼のこともずっと可愛がってくれていたのに――いったい、どうしてしまったのだろう。

「弟でもダメ。君の作品を、他の男が着ているだなんて考えただけでぞっとする」
「お父様の分も?」
「もちろん」

 意外な彼の独占欲に、イリーナの目が丸くなった。相手は弟と父親だ。何一つ彼が焼くような要素なんてないのに――。起きあがったマティアスは、イリーナをじっと見つめている。あまりにも真面目な表情をしているから、おかしくなってしまった。

「いいわ。あなたがそう言うのなら、今年はお父様とルーカスの分は編まないことにする」

 父はともかく、弟は気に入らないかもしれない――だが、マティアスの独占欲を嬉しいと思ってしまったのだから、しかたないではないか。

 けれど、それだけでは彼にとっては不十分なようだった。

「だめ。今年だけじゃなくて、今年も来年もその次も――ずっと、俺以外には編まないって約束してくれないと」
「わかったわ」

 そう約束すると、ようやくマティアスは機嫌を直したようだった。

「あ、そうだ。君が焼いてくれたマフィンが食べたいな。ベリーのジャムを生地に混ぜ込んだやつ」
「それなら、明日はお茶の時間に合わせてマフィンを焼くわね。それでいい?」
「うん――すごく楽しみだ。イリーナにも何かお返しをしないと」
「お返しなんて……必要ないのに」

 彼がおいしく食べてくれるのなら、それだけで十分幸せだ。お礼なんていらない。

(……これから先のことを考えたら、不安がないとは言いきれないけれど)

 この別荘を出て、家に戻ることになったら何が起こるかわからない。不安がないとは言えないが、こうやって彼と過ごしていられる時間は幸せだ。

「何?」
 不意に鼻の頭を擦り合わせるようにしてキスされて、イリーナは首を傾げる。

「ん? お礼の先払い」

 悪びれない表情で、マティアスはさらりと言ってのける。「もう!」、とクスクス笑いながら、彼を軽くたたくそぶりをしてみたけれど、やっぱり幸せなのだとイリーナは強く思った。



※サイト掲載のこの短編は、2015年11月発売乙蜜ミルキィ文庫の関連作品です。 ■初出 乙蜜ミルキィ文庫「蜜恋エンゲージ 一途な公爵の甘い誘惑」(リブレ出版刊)


◇◇◇

お付き合いありがとうございました!
いやー、毎日更新予定で途中まで準備はしてたのですが。

「蜜恋エンゲージ 一途な公爵の甘い誘惑」本編の方もヒーローヒロインの二人がひたすらいちゃいちゃしております。
ご意見ご感想お寄せいただけたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いします☆彡

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    蜜恋エンゲージ 一途な公爵の甘い誘惑 番外編4 
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Date:2015/11/27
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