迷宮金魚

□ 身代わり花嫁の蜜月 番外編 □

身代わり花嫁の蜜月 番外編(4)

 
 鋭い快感が走り抜けて、シルヴィはもう一度背中を弓なりにする。頭からシュミーズが引き抜かれて、残っているのはあと一枚だけ。

 両手で胸を覆い隠そうとするが、その手は優しくシーツの上に縫い止められた。首筋から緩やかに胸元へとセルジュの舌が這っていく。

 身体が素直な反応を返すのはごく当然のこととして受け入れていたけれど、羞恥心までが失われたわけではなくて、身体を捩る。

「はっ……ん、あ、あぁ……」

 舌が肌に触れる度に、ぞくぞくする感覚が腰のあたりにたゆたう。シルヴィが喉をそらすと、すかさずそこにも唇が押しつけられる。軽くその場所を吸い上げられたら、つま先が落ち着きなくシーツを蹴った。

「わ……、私だけは、いや……」

 彼の方は、まだ首に巻いていたクラヴァットを解いただけ。
 シルヴィの訴えに、彼は小さく笑うと上着を肩から滑り落とした。その間に、シルヴィの手はベストのボタンを外している。

「今日はずいぶん積極的なのだね」

 セルジュの言葉には、そっと視線を落とす。ひょっとして、嫌がられてしまっただろうか。

「……おいやですか?」

 シャツのボタンを外しかけていた手が止まってしまう。セルジュに嫌われるのだけは嫌だった。多少はめを外したところで、セルジュがシルヴィをうとましく思うことなどないはずなのに。

「いや、そのくらい積極的でいいと思う。さあ、続けて」
「つ、続けられません……」

 ボタンを外していたはずの手が、いつの間に彼の手にとられている。ゆっくりと彼のシャツの中へと手を滑り込まされた。

 セルジュの身体に、無駄な肉などついていないことくらいよくわかっている。怠惰とは正反対のところに位置している彼の身体は、しっかりと引き締まっていた。

 手を滑らせれば、彼の心臓が脈打っているのを感じることができる。

「セルジュ様も、どきどきするんですね」
「心臓が動いていなかったら大変だ」
「そ、そういう意味ではありません――!」

 わかっているくせに、彼は時々意地悪だ。今だって、こうやってシルヴィをからかっていて、彼女の表情を観察しては楽しんでいる。

 ん、もう――と頬を膨らましかけて、シルヴィは気がついた。こんな風に、彼の前で素直に表情に出すのはいつ以来のことだろう。

 彼に引き取られてからも、結婚してからも。本来シルヴィのいるべきところではない場所に入り込んでしまった罪は重くて。

 迷惑をかけないように、負担にならないように、少しでも彼の役に立てるように。

 そんなことばかり考えていたから、彼の前では、感情を殺すことしかできなくなってしまった。

「何を考えているのかな――気をそらしていると、私の方から悪戯をするよ」
「や、だめですっ……だめですってば!」

 シルヴィは慌てて身を捩る。セルジュのシャツから抜け出た手を掴まれて、そのままシーツに押しつけられた。

「……もうっ」

 今度こそ、くすくすと笑いながら頬を同時に膨らませるという器用な真似をしながら、セルジュを軽くにらみつける。シャツを床の上に放り出したセルジュが、シルヴィに体重をかけてきた。

 こんな風に幸せを感じていることを、どうしたら彼に伝えられるだろう。彼がシルヴィ自身を望んでくれている。それだけで、その他の何もかもがどうでもよくなってしまうくらい幸せだ。

「セルジュ様、私――幸せ、なんです。とても」

 こうやって、彼と密着しているのが心地よくて幸せで。でも、それはきっとシルヴィにしか知ることのできない感覚なのだと思う。

「私もだよ」

 頬に触れる彼の唇が、こんなにも優しい。子供にするのと同じ仕草――でも、そこに込められている感情が、子供に対するものとは全然違うことをシルヴィは知っていた。

「んっ……」

 耳朶に唇が押し当てられる。そうして、唇で挟み込まれると、くすぐったいような甘いような不思議な感覚が押し寄せてくる。

「シルヴィは、耳が弱いのだっけ?」
「し……知りませんっ、やぁんっ!」

 耳朶に沿って、舌が這う。そうしている間に、彼の手はゆっくりと胸元へと滑り降りてきた。剥き出しになった乳房の上を滑り、その先端で震える蕾に忍び寄る。

 頂をゆっくりと扱かれて、シルヴィの背中がしなった。そこは、今までのじゃれあいですっかり硬くなっていて、そこから先の行為を待ち望んでいるかのように硬くなっていた。

「あっ……ん、あ」

 すっかり素直になったシルヴィの口からは、悦びを告げる声が上がる。その声に素直に従って、セルジュはもう片方の胸に唇を寄せた。

 片方の頂を指で刺激されながら、もう片方を舌でつつかれる。同時に送り込まれる感覚に、あっという間にシルヴィの思考は奪われていく。

2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    身代わり花嫁の蜜月 番外編(3)      身代わり花嫁の蜜月 番外編(5) 
既刊一覧

電子書籍



*    *    *

Information

Date:2016/03/01
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://goldfishlabyrinth.blog.fc2.com/tb.php/171-6ff37372
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)