迷宮金魚

□ 身代わり花嫁の蜜月 番外編 □

身代わり花嫁の蜜月 番外編(5)

 
 シルヴィがシーツの上で身悶えすると、セルジュはさらに手を這わせてきた。胸が柔らかく揉まれ、脇腹をすぅっと撫でられる。そのたびにぞくぞくとする感覚が、下腹部を妖しく震わせて、シルヴィの官能を深めていく。

「んっ……セルジュ……様……」

 喘ぎ混じりに彼の名を呼ぶ。自分の身体が、すっかり彼に馴染んでいることも、彼の与えてくれる快感から逃れられないことも、シルヴィの悦びとなって、身体に愉悦が浸透していく。

「どうしてほしい? ああ、ここにキスをしようか」

 ささやかな乳房の間にキスが一つ。軽く吸い上げられて、赤い跡がつく。

「やっ……見えちゃ……」
「明日は、あのピンクのドレスで晩餐に行けばいい。それとも、この部屋で晩餐をとろうか」
「そ、それは……ん、あぁんっ」

 そんなところに跡をつけられてしまったら、数日間は部屋から出られなくなってしまう。彼とずっと二人でいられるのならそれでもいいかと思ってしまうシルヴィは、つくづく単純にできているのだろう。

「も、う……ん、あ、もうっ……!」

 焦らされ、切なさばかりが押し寄せてくる。耐えきれなくなって、両腕を伸ばすと、小さく笑った彼が脚の間に身体を割り込ませてきた。

「欲しい、と言ってごらん」

 今日の彼は、やはり意地悪だ。自分からシルヴィに欲しいと言わせるなんて。一瞬、情けない表情になったシルヴィだったけれど、一度火のついた欲望を鎮めることなんてできなかった。

「ほ、欲しい……です……」

 目を伏せ、小さな声で言う。そのとたん、下肢の奥がきゅうっと疼いて、自分がどれだけ彼を欲しがっているのかをありありと訴えかけてきた。

 柔らかなキスが唇に落とされ、対照的な荒々しさで彼が奥へと入り込んでくる。媚壁は、強烈にわなないて、視界が一瞬にして白一色に塗りつぶされた。

 ベッドのきしむ音と、切なげな喘ぎ声が室内に響き渡る。彼の腕の中で、こうしていられるその時を、失いたくないと痛切に願った。

「……シルヴィ、寝てしまった?」
「……いいえ」

 シルヴィがどう頑張ったところで、彼にかなわないのはわかっている。彼とは生きてきた年月がまるで違うし、その経験値の違いを嘆いたところでしかたのないことも、理解している。

 ただ、彼がこんな風に求めてくれるのが嬉しかった。

「今日の夕食は、楽しかったね。君はどう?」
「とても、楽しかったです」

 それ以上を伝える術をシルヴィはもたなかった。なんと説明すればいいのだろう。シャルトン夫妻は、シルヴィにとって――

(……ああ、そうね。そういうことなのだわ)

 すとんと胸に何かが落ちたような気がした。そう、夫妻はシルヴィにとって、理想の夫婦に限りなく近いのだ。

 両親ももちろん理想なのだけれど、彼らの記憶は若いところで止まってしまっている。ある程度年をおいた彼らについては、想像することしかできない。想像することはたやすいし、その中での彼らは幸せそうに微笑んでいるけれど――。

(ああいう風になれたらいいと思うわ)

 夫妻が互いに向ける感情は、シルヴィの目から見ても羨ましいほどに輝いていた。いつか、セルジュとあのような未来を掴むことができるだろうか。

「……あんなご夫婦になれたらいい――そう、思います」

 愛し合った後の気怠い余韻の中、不意にシルヴィの口からそんな言葉が零れ落ちた。そう、彼らのような夫婦になることができたらいい。

「なれるさ、絶対に」

 シルヴィを引き寄せて、彼は頭を撫でてくれる。それは、子供に対するような仕草であったけれど、さほど嫌とは思わなかった。それどころか、そうされているのを幸せだと思ってしまうのだから、自分もどうしようもないと思ってしまう。

「また、動物園に連れて行ってくださいますか?」
「そのくらいの時間はとれるよ、もちろん。それから、新しいドレスを仕立てなくてはね」
「セルジュ様のフロックの方が先でしょう。最近は、紺が流行なのですって。セルジュ様に似合うと思うんです」

 ああでもない、こうでもないと、何ともない会話をかわすことができるのを、どうしようもないくらい幸せだと思う。

「明日も、サロンカーに行ってみようと思います」
「仕事が終わったら、私も合流するよ」

 アンクレールに到着するまでには、まだ何日もある。その間彼を独占できることを、幸福に重いながら、シルヴィはもう少しだけ彼の方に身を寄せたのだった。

2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    身代わり花嫁の蜜月 番外編(4) 
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Date:2016/03/02
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