迷宮金魚

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2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    侍女の困惑 王子の寵愛      侍女の困惑 王子の寵愛 (2) 
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□ 侍女の困惑 王子の寵愛 □

侍女の困惑 王子の寵愛(1)

 
「……あのですね、殿下」

 ルチアは、自分の目の前に座っている男に向かって、盛大にため息をついた。

「なぜ、私のところにいらっしゃるんですか? 私は王女ではありませんよ?」

 そんなルチアに向かって、クリストハルトは悪びれない笑みを向ける。

「なぜって、俺がルチアに会いたいからに決まっているだろう」
「縁談のお相手は、ヴィオレッタ様でしょうに」
「お前が相手でも、俺は問題ないぞ」
「……そうではなく!」

 つい、ルチアの声も大きくなる。

 ルチアが相手でも問題ないとか気にしなきゃならないのはそういうところじゃない。

 ルチアがアントリム王国に入ったのは、クレディナ王国の王女ヴィオレッタの侍女としてであった。

 ヴィオレッタと、アントリム王国の二人の王子、エドウィンとクリストハルトのどちらかを結婚させようという話が出た。

 ヴィオレッタは十八歳。王太子エドウィンは二十三歳、弟のクリストハルトは二十二歳。年の頃はいずれもつりあっている。両国の王妃は姉妹であり、従兄妹同士でもあることから、互いに気心は知れている。

 最終的にヴィオレッタがどちらを選ぶのかということだけが問題であり、二人の王子はヴィオレッタの興味を引くために全力を尽くすと思われていた。

 だが、クリストハルトは何を考えているのやら――ヴィオレッタではなく、ルチアと一緒にいる時間の方がはるかに長い。それは、最初に顔を合わせた日から変わらなかった。

「ルチアは、俺が嫌い?」
「そ、そういうわけでは……」

 じっとりとした目で見つめられ、ルチアはうつむいてしまった。

(……嫌いではない、けれど)

 彼に対する気持ちをどう表したらいいのか、まだルチアにはわからない。だって、顔を合わせてからまだひと月というところなのだ。

 だいたい、ルチアの方から「嫌い」などと言えるような関係でもない――そんなの不敬になってしまう。

「それなら、問題ないだろ?」
「おおありです! ヴィオレッタ様とお話しなさってください」
「ヴィオレッタなら兄上と仲良くしているぞ。俺は彼女に従妹以上の興味は持っていない」

 ヴィオレッタに興味がない、と言われ、ルチアの目が丸くなる。それきり何も言えなくなって、ルチアは唇を引き結んだ。

 こうやって、二人でいるのは正直落ち着かない。

 ここは、ルチアがアントリム王国滞在中に使うようにと言われている部屋だ。ルチア自身侯爵家の娘ということもあり、部屋は居心地よく整えられていた。

 二人が向かい合って腰を下ろしているのは、布張りの豪奢なソファだ。優美な彫刻の施された猫足のテーブル。毛足の長い絨毯。

 ベージュに金で花模様の織り込まれたカーテンは、今はぴたりと閉じられている。そのカーテンにうろうろと視線をさ迷わせ、そして前にいるクリストハルトの方へと戻す。

「――明日の舞踏会。最初のダンスは俺と約束だ。ヴィオレッタ姫は、兄上が独占する予定だからな」
「……それは」

 どうしてこの人は、こんなにもルチアに興味を持つんだろう。その理由もわからないまま、ルチアはうなずくことしかできなかった。
 
 ‡ ‡ ‡
 
 翌日、ルチアは着飾ったヴィオレッタと一緒に舞踏会に参加した。

 ライラック色のドレスの身頃には白く繊細なレースが全面的にあしらわれている。スカートは幾重にも布を重ね、淡いピンクとライラック色を重ねたフリルが何段も作られていてとても華やかな雰囲気だ。

 ヴィオレッタの方は明るいピンクとベージュを基調としたドレスだった。ピンクのスカートの上に重ねられたふわふわとしたシフォンのスカートは、ヴィオレッタの動きに合わせてゆらゆらと揺れる。手首のところには幾重にもレースが重ねられていた。

「今日は、エドウィン様と最初のダンスを踊るのよ。あなたはクリストハルト様と踊るのでしょう?」
「……ええ」

 ヴィオレッタは、クリストハルトとあまり会話をする機会がないのを気にしている様子もない。エドウィンとはかなり親しくしている様子なのに。

「あなたは、クリストハルト様のことをどう思っているの?」
「どうって言われても……」

 困惑するばかりで、どうしたらいいのかわからなくなる――だって、王女ではないルチアに声をかけてもどうしようもないのに。

「私は……エドウィン様に決めたわ。きっと、エドウィン様も私を選んでくれると思うの」

 ヴィオレッタが首を傾げると、先ほどルチアが結った髪がさらさらと揺れる。それから、ヴィオレッタはルチアの手を自分の両手で包み込んだ。

「だから、クリストハルト様のことは気にしないで」
「……クリストハルト殿下が、何をお考えなのか……私にはわからないのです」
「最初から、あなたのことが好きなのよ」
「そうでしょうか」

 真っ正面から、ヴィオレッタはルチアの瞳をのぞき込んでくる。彼女の瞳に映るルチアは、とても不安そうな表情をしていた。

「あら、エドウィン様だわ」

 ルチアの手をもう一度ぎゅっとしてから、ヴィオレッタは立ち上がる。軽やかな足取りでエドウィンの方へ向かうヴィオレッタを、ルチアはぼうっと見送った。

「ルチア」
「殿下」

 声をかけられて、ルチアは一礼した。クリストハルトは、今日は金糸で豪華な刺繍を施した緑の上着を身に着けている。見事な金髪はきっちりと整えられていて、緑色の瞳が正面からルチアを見つめていた。

「最初のダンスは、俺と踊る約束だっただろう」
「……はい」

 ヴィオレッタの方は、エドウィンに連れられてフロアに出ている。そして、他の女性達も次から次へと声をかけられて進み出ていた。

 ルチアはクリストハルトの手に自分の手を重ねる。彼の体温に自分の体温が重なって、胸がどきどきふわふわとしてきた。

 楽師達が、最初の曲を奏で始める。正面にいるクリストハルトを見ることができなくて、彼の肩越しに、ヴィオレッタの方に目をやった。

(よかった。ヴィオレッタ様、楽しそうにしている)

 ヴィオレッタの頬は、紅潮して目はキラキラとしていた。エドウィンを見つめる彼女の頬が赤く染まっている。

「ほら、あちらはいい感じだろう」
「そうですね。お話がうまくまとまるとよろしいのですが」

 ヴィオレッタとエドウィンの婚約が成立したならば、ルチアの役目も終わりとなる。そうなったらクレディナ王国に帰ることになる。

「ルチア、俺から離れるなよ」
「離れるなって……」

 ヴィオレッタの話がまとまるのなら、クリストハルトの好意を受け入れるのに問題があるわけではないけれど。ルチアはそっとため息をついた。

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Date:2017/01/30
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