迷宮金魚

□ えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ! 試し読み □

えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(2)

 
第一章 再会した幼なじみは王子様でした

 家族の集まるリビングで受け取った手紙を読み終え、丁寧に折りたたんだヴィアナははぁぁっと深いため息をついた。

(また、だめだった……)

 手紙の差出人は、先日お見合いした青年だった。近所の人の紹介で知り合い、何回か二人で公園の散歩もした。

 この間なんて、帰り際にぎゅっと手を握ってくれて――このまま順調にお付き合いを続けていけると思っていたのに、手紙でもう二人で会うつもりはないと宣言してきた。

(どうして、いつもだめになっちゃうのかな……これで、十回目。そんなに、私、どこかおかしいのかしら)

 今年十八になったヴィアナには、そろそろ縁談の一つや二つ持ち上がってもおかしくはない。

 実際、今までに何度も――正確に言えば十回も話があった。

 その中には、婚約一歩手前まで進んだものもあったのに、いつも途中でだめになってしまう。

(このままじゃ、一生お嫁に行けないかも)

 そう思ったら、じわりと涙が滲んできた。

「ヴィアナ、何があったの?」

 妹のアイナが問いかけてくるのには首を横に振って、自分の部屋へと逃げ込む。

 ベッドと小さな書き物机を置いたらいっぱいになってしまう狭い部屋だけれど、この場所はヴィアナの聖域で避難場所だった。

(……今回は大丈夫だって紹介してくれたおばさんも言ってくれたのに)

 それなのに、どうして毎回だめになってしまうのだろう。

 君とはもう会うことができない――そう書かれている便せんを机の上に放り出してベッドに倒れ込んだ。

(どうしていつも、嫌われちゃうのかしら)

 起き上がって壁にかけた鏡を見てみると、ふわふわの金髪が、ベッドに倒れ込んだ衝撃でぐしゃぐしゃになっていた。

 そんなに自分の顔立ちは悪いと思わない――そりゃ、美人かと言われれば違うけれど、少なくとも目と鼻と口はついているし、ひいき目で見たら「可愛い」と言えなくもない。

 性格もすごくいいとは言いきれないけれど、すごくわがままというわけでもないし、特に怒りっぽいというわけでもない。

 それなのに、毎回こうやって、もう会えない――と言われることになってしまうのだ。

(……私、もう十八なのに)

 十八ともなれば、そろそろ婚約が決まって当然だし、二十歳を過ぎて結婚できなかったら、行き遅れ確定だ。

 はぁっともう一度ため息をついて、ヴィアナはベッドから立ち上がった。

 いつまでもこんな風にしていてもしかたない。家の手伝いをして、気を紛らわせることにしよう。
 
 このままでは行き遅れになってしまうという、ヴィアナの焦りは、お城からの一通の手紙によって突然解消されることになった。

「お父さん、お母さん――用事って何?」
「いいからこれを読みなさい」

 リビングのソファには、厳しい顔をした両親が並んで座っている。

 ヴィアナの母親は若い頃、王妃の侍女をしていた時期があったそうで、年に一度か二度、王妃の使者が手紙を届けてくれる。

 その時に母が受け取る封筒と同じものが、リビングのテーブルに置かれていた。

(……王妃様からのお手紙を、私に見せてくれるのは初めてね)

 ヴィアナは、眉間に皺を寄せながら渡された便せんを開いた。

 熟読すること、三回。

「……どういうこと?」

 三回読んでも信じられなくて、立ち上がって叫ぶ。

「お城に出仕しなさいって……お城で働きなさいってことよね?」

 手紙の内容を要約すれば、ヴィアナに「城に働きに来い。迎えの馬車は三日後にそちらに着く」と書かれていて、どう見ても拒否権なんてない。

「なんで? なんで? なんで、私なの?」

 母は王妃の侍女だった時期もあるけれど、それは特殊な事情が重なった結果であって、普通ならヴィアナ達の身分でお城に出仕するなんてありえないのだ。それなのに、こんな召喚状が来るなんて。

「……落ち着きなさい、ヴィアナ」

 母が慌てているヴィアナをソファに座らせた。

「――私達にも詳しいことはわからないのだよ、手紙には、詳しいことは書かれていないからね。詳しいことは、お城に行ってから聞きなさい」

 ヴィアナは慌てているけれど、父も母も平然としている。

 でも、ヴィアナはそんなことでは納得できない。

「だって、お城で何をするの? 厨房? それともお庭? ああでも、お庭には専門の庭師の人がいるしね。料理人もいるでしょ? それじゃあ、洗濯係かしら」

 厨房で大量に芋の皮を剥くとか、洗濯するとか――そのくらいならヴィアナにもできると思う。

「行くまでわからないと、今お父さんが言ったでしょう。それにあなたに選択権はないの」

 若い頃、王妃の側で仕えていた母の言葉に、ヴィアナは考え込んだ。
 お城に働きに出るなんて、名誉なことだ。命令なのだから、こちらから拒否することもできない。

(それに、このまま家にいても、結婚決まりそうもないし……)

 ――それなら。

 いっそのこと、このままお城に働きに行ってしまっていいんじゃないだろうか。

 目指せ、職業婦人。

(お城で働くなら――一生独身だってあまりうるさいことは言われないだろうし)

 今のところ、両親はうるさく言ってくるわけではないけれど、二十歳になってもこのままだったら、きっとうるさく言うだろう。両親は何も言わなかったとしても、親戚や村人達の圧力はますます強くなるに決まっている。

(だったら、行かない理由なんてないじゃないの)

 なるようになる。ヴィアナは腹をくくることにした。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。



2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ! 試し読み(1)      えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(3) 
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Date:2017/02/02
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