迷宮金魚

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2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    侍女の困惑 王子の寵愛(1)      侍女の困惑 王子の寵愛 (3) 
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□ 侍女の困惑 王子の寵愛 □

侍女の困惑 王子の寵愛 (2)

 
 最初のダンスが終わった後も、クリストハルトはルチアを離そうはしなかった。常に彼はルチアの隣にいて、ルチアと踊りたそうにしている他の男性達を追い払うのに忙しい。

「こんなにたくさん声をかけられるとは思っていませんでした」
「お前の実家、トゥラーティ侯爵家と繋がりを持ちたい者も多いからな」

 クリストハルトが隣にいるからか、集まってきた男達もさほどしつこくなく引き下がっていく。ルチアは隣にいるクリストハルトにちらりと視線を投げかけた。

「ところで、そろそろ名前で呼んでくれないか」
「ところでって……」

 彼の口調に、ついルチアはくすりと笑った。

(本当は、嫌じゃないから困るのよね……)

 クリストハルトは、ルチアにこうやって開けっぴろげに好意を向けてくるし、それは最初に顔を合わせた時から変わらない。

 ――けれど。

「ルチア、エドウィン様がお庭に出ようとおっしゃっているの。部屋からストールを持ってきてくれないかしら」
「かしこまりました」
「待て、ルチア――俺も一緒に行くから」

 ルチアと一緒にクリストハルトも広間を出る。

「ついでだからルチアもストールを持ってこい。俺と一緒に庭に出よう」

 その誘いには、すぐに返事することができなかった。返事につまっているルチアの肩を叩いて、クリストハルトは笑う。

「兄上とヴィオレッタを二人きりにするわけにもいかないだろ――いや、俺は別にかまわないんだけど外聞が悪いというか」
「言っておくけどな。兄上とヴィオレッタが幸せなら、俺はそれでいいんだ」

 王宮の長い廊下をクリストハルトと並んで歩くのは、不思議な気がする。ヴィオレッタは何度も、アントリム王国を訪問しているけれど、ルチアは今回が初めてだ。

 行き交う使用人達が、二人の姿を見ると脇に避けて頭を下げる。

「俺はここで待ってる。女性の部屋に入るわけにはいかないからな」
「急いで戻りますね」

 ヴィオレッタの部屋の前でクリストハルトと別れて、クローゼットにしまわれていたストールを取り出す。

 ヴィオレッタの部屋とルチアの部屋は中の扉で行き来できるから、クリストハルトを廊下に待たせたまま、ルチアは自分の部屋に続く扉を開いた。

(……あら?)

 扉を開いたそのとたん、不意に違和感に襲われる。今、ふっと冷たい風が吹き抜けていったような。

 声を上げる間もなく、腕を掴まれ、床の上に引き倒される。上にのしかかられ、大きな手で口を塞がれた。

「んーっ、んーっ!」

 そのまま喉に手がかけられる。足をばたばたさせるけれど、上に乗った人物の力にかなうはずもない。足をばたつかせ、身体を捩るものの振り払うことはできなかった。

 必死に伸ばした足が、壁際に置かれていた花台を蹴り飛ばす。花台が倒れ、花瓶が床に転がり落ちて、激しい音を立てた。

「――ルチア!」

 その物音でただ事ではないと判断したのだろう。廊下に続く扉が開かれ、クリストハルトが飛び込んでくる。

 ふっと上にのしかかっていた重みが消えた。

「何者だ!」

 クリストハルトの誰何の声が響く。足音が窓の方へ行ったかと思ったら、テラスへと出る音がした。

「待てっ!」

 クリストハルトが男を追ってテラスへと出ていく。彼が警護の兵士達を呼び集め、後を追うよう命じるのが聞こえてきた。

 身を起こさなければと思うのに、身体が動かない。指先で絨毯をひっかくだけ。

「大丈夫か?」

 戻ってきたクリストハルトの力強い腕が、ルチアを抱え起こしてくれる。身体に力が入らなくて、そのままクリストハルトの胸に倒れ込んだ。

「あ、の……」

 がたがた震える身体を包んでくれる力の強さと温かさにほっとした。

「悪かった。部屋の中に入るつもりは」
「いえ……そうではなくて」

 クリストハルトの手が、ルチアの背中を上下する。そうされているうちに、少しずつルチアの震えも収まってきた。

「なんで、私の部屋なんかに――」

 そう口にしたとたん、目尻からぽろりと涙が流れ落ちた。今まで、こんな風に暴力にさらされたことなんかなかった。

「泥棒――だろう。しかし、王宮の奥に入り込むだなんていったいどうなっているんだか。警備がたるんでいるな。父上に話をしておく」
「……でも」
「隣の部屋と間違えたという可能性もあるな――兄上達も、庭園の散歩は諦めてもらった方がよさそうだ」

 クリストハルトの胸に、ルチアは顔を押しつけた。規則正しい心臓の鼓動が聞こえてくる。

「隣は、ヴィオレッタ様の部屋ですものね。きっと、そちらと間違えたのですよね」

 自分でも気がつかないうちに、彼の上着をぎゅっと掴んでいる。

「そういうことだ。さあ、いつまでも床の上に座っていてもしかたがないだろう。今、温かい飲み物を運ばせる。それを飲んだら、今日はもう休め」
「……ヴィオレッタ様のお世話が」
「誰か、他の者をやるから……そんなに手が震えているのに、ヴィオレッタの世話なんてできるはずがないだろう」

 言われて初めて気づく。ルチアの手はがたがたと震えていて――。慌てて手を離し、自分の身体の前で組み合わせた。

 クリストハルトが命じていたのは、温めた牛乳だった。そこにたっぷりと蜂蜜を入れ、甘くしてある。

「私……もう、大丈夫ですから」

 クリストハルトを独占しているのが気になって、ルチアはカップをテーブルに戻した。甘さと温かさがほっとさせてくれたのか、もう大丈夫だ。

「ルチアが大丈夫なのはわかっている。俺が、心配で様子を見ていたいだけなんだ」
「ヴィオレッタ様はどうなさっていますか」
「母上の侍女を回してもらった。あちらも、今日は舞踏会から引き上げるそうだ」
「……申し訳ありません」
「謝るのはこちらだろう。警備に手薄なところがあったとしか思えない」

 なぜなんだろう。

 疑問がルチアの頭の中を巡る。

 ヴィオレッタがこの国に嫁ぐであろうことは、以前から決められていた。両国の王族が親戚で血が近いということもあり、ここ百年近く、両国はいたって友好的な関係を保っている。

「ルチアは、今日はもう休め。明日も大変だろう」
「……はい」

 眠れそうもないけれど――立ち上がったクリストハルトが額にキスを落として去る。彼の唇が触れたところに手をやって、ルチアは真っ赤になった。
2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
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Date:2017/02/01
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