迷宮金魚

□ えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ! 試し読み □

えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(10)

 
第二章 お休み係ってなんですか

「あいたたた……」

 妙な格好でソファの上にいたものだから腰が痛い。ヴィアナは腰をさすりながら、廊下を歩いていた。

 ここに来た時同様、数歩前を歩いていたバートが苦笑いで振り返る。

「いきなり大変な苦労を押しつけてしまったみたいで申し訳ないね」
「いえ、それは別にかまわないんですけど」

 手にしているのは実家から持ってきた小さな鞄一つ。王城では、制服も下着も全て新品が支給されるので、必要最低限のものだけを持参するようにと言われていた。

 その鞄を手に、ヴィアナが今ぺたぺたと歩いているのは、恐れ多いことに王城の中でももっとも私的な空間だ。

 ここに出入りを許されるのは王族、一部貴族に、王族の世話をすることを命じられている使用人のみ――そして、ヴィアナもその一人になぜか加えられたというわけだ。

「君を呼んだのは正解だったね。ブライアス様があんなにぐっすりお休みになったのは久しぶりのことだから」
「刷り込みじゃないですか。子供の頃――いつも、私の読み聞かせで寝てたから、私の声に何かあるんでしょう、きっと」

 結局、お茶を飲み終えた後、ソファの上でブライアスは眠り込んでしまった。

 どうしたものかわからず、ずっと下敷きになっていたけれど、前日ブライアスは徹夜だったそうだ。

 結局、いくら何でもおかしいとバートが様子を見に来るまで、ブライアスはヴィアナの上で眠りこけたままだったのだ。

(男の人一人支えるのって重いのよね……)

 ヴィアナも声を上げてバートを呼べばよかったのだろうけれど、できなかった。妙な格好で眠ったブライアスを支えていたから身体のあちこちが痛い。

「でも――お休み係って名称はあんまりだと思うんですよ! もっと、こう何かないんですか」
「寝かしつけ担当とか?」
「そ、それもどうかと……」
「いいんじゃないかな、お休み係。可愛くて僕は好きだけど」
「問題はそこじゃないですよ……?」

 バートってこんな人だっただろうか。いまいち会話が噛み合ってないような気がしてならない。

 アルヴィン国王の退位が決まって三カ月。それ以前から少しずつ政務を任されていたブライアスの肩に一気に責任がのしかかることになった。

 むろん、そのための準備は進めてきたけれど、気が付いたらあまり眠れなくなっていたのだという。

 寝不足が続けば政務にも差し障りが出てくる。そこで、ヴィアナに声がかかったというわけだ。

「ブライアス様が、冗談で『ヴィアナが本を読んでくれたら眠れるかもしれない』って言った時には、僕もまさかって思ったけど――あそこで寝落ちてたってことはそうなんだろうね」
「……お役に立てるなら、別にいいんですけど」

(どうせ、あのまま実家にいても……あまりいい思いはできなかっただろうし)

 そんなわけで、ヴィアナの仕事は王太子専属の世話係――というか、主に寝かしつけ担当、というか彼の快適な睡眠時間の確保が仕事なのだそうだ。

「だから、君の部屋はブライアス様のすぐ隣だよ。夜中に眠れなくなったら呼び出される可能性もあるし」
「は、はぁ……」

(なんだか、大変なことになってしまったかも……)

 と思って気が付いた。

(というか、ブライアス様が結婚したら、その役目って必要なくなるんじゃ)

 それは困る。とても困る。一生結婚しないでお勤めするつもりで来たのだから。ぱたぱたと足を速めて、バートに追いついてからたずねる。

「あのですね、ブライアス様が結婚したらどうなるんでしょう? 他の職場、世話してもらえたりします? 一生働けないと、私、ちょっと困る……」
「あ、うん……だ、大丈夫じゃないかな……?」

 ヴィアナが問いかけると、バートは視線をそらした。天井を見上げて、それはもう実にわかりやすく質問をはぐらかそうとする。

「なんで、そこで目をそらすんですか」
「い、いや、たいしたことじゃないし。大丈夫、もし、君の仕事が必要なくなったら、僕が責任持って新しい仕事を見つけてあげるから」
「お願いしますね? 本当ですよ?」

 なんて、バートにお願いしているうちにヴィアナの部屋に到着した。

 バートが扉を開けてくれて、ヴィアナは室内に足を踏み入れた。

「う……嘘ぉ……」

 真っ先にヴィアナの口から出てきたのは、その一言だった。

 部屋の中央には、どーんと天蓋つきのベッドが鎮座している。天蓋から吊られた白いレースのカーテンがベッドの周囲を覆っていた。

 ベッドから少し離れた壁際には、鏡の縁が金色の鏡台が置かれている。

 窓の側には立派なデスクと壁には本棚。部屋のいたるところに花台が置かれていて、ピンクの薔薇の香りが部屋中に満ちていた。

 それから低いテーブルと、小花模様の布が張られたソファが置かれ、ソファにはピンクのクッションが並べられている。

 全ての家具は白を基調として、金具は全て金。その他に使われているのはさまざまな濃淡のピンクだ。いたるところ、花とレースとフリルで飾られ、部屋中がキラキラしていて、まるで――これでは、まるで。

(お姫様の部屋みたい……)

 目を丸くしたまま、ヴィアナは心の中でつぶやいた。

 実家のヴィアナの部屋はベッドと机が一つあるだけ。洋服は壁に作り付けの洋服ダンスにしまっていたので、その二つさえあれば困らなかった。

 それなのに、この部屋は実家の部屋が十個入ってもまだ大丈夫なくらい大きい。

「ここが君の部屋。気に入ってくれたらいいんだけど――内緒だけどね、全部ブライアス様が選んだんだよ」
「き、気に入るとか気に入らないとか……そんなものじゃなくて、もう圧倒されています」
「それなら、よかった。言っておくけど、ブライアス様の前では知らないふりしておいてね。僕が選んだってことになってるから」

 素直なヴィアナの言葉に、バートは嬉しそうに笑った。

(これ、全部ブライアス様が選んでくれたの……?)

 あの彼が、ヴィアナのためにこんな可愛らしい家具をそろえてくれたのかと思うと――とてもどきどきする。

 側に行くよう促されて、立派な天蓋付きのベッドに近寄る。ベッドに置かれている寝具もまた、白一色だった。上掛けと枕カバーにはレースがあしらわれている。

「これ……シルク……ですよね?」

 枕カバーに手を触れて、その滑らかさに顔がひくつく。敷布も、上掛けもぜーんぶシルクで統一だ。

 こんな高価な寝具で眠れる人がいるのなら、顔を見せてもらいたい――いや、ヴィアナの雇い主がそうだったか。
 
「そう? でも、ここは王城だからこんなもんだよ。君は個室だからちょっとだけ特別だけど、寝具はどの使用人部屋もいい品を置いているから」

 その言葉に、ヴィアナは改めて周囲を見回す。

(絶対に、落ち着かない……!)

 こんなにもだだっ広い部屋でちゃんと眠れるのだろうか。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。


2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(9)      えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(11) 
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Date:2017/02/10
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