迷宮金魚

□ えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ! 試し読み □

えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(11)

 
「今日、到着したばかりで悪いけど、今から仕事にかかってもらうよ。まずは、殿下の寝室の掃除――今日の分は終わっているから、やり方だけ覚えてもらう」

 ヴィアナの仕事は、ブライアスの寝室を整えることと、寝る前の読み聞かせ――あとは、バートの手が回らない時には、ちょっとした身の回りの世話もするらしい。

 図書室に彼の読みたい本を取りに行くのも、彼が寝室で読むのに持ち出してきた本を返すのも、ヴィアナの仕事になるそうだ。

 目をぱちぱちとさせていたら、バートがつかつかと壁に作りつけられている洋服ダンスに歩み寄った。

「寝室に花を飾るのもいいと思うよ。絵の架け替えは季節ごとだけど、これは僕の方でやるから、細かいことは気にしなくていい。じゃあ、ここに制服が入ってるから、それに着替えたら、そこの扉を開いて隣の寝室に来て」
「か、かしこまりました」

 いよいよこれから仕事が始まる。そう思えば、この贅沢な部屋の中でも身の引き締まる思いだった。

 指示されたとおり、作りつけられた洋服ダンスの扉を開く。そして、もう一回「うそぉ」とつぶやいてしまった。

 タンスの中には、使用人の制服が用意されている。

 でも、そこに置かれていたのはそれだけではなかった。紺色の制服の他に色とりどりのドレスが下げられている。

「なんでこんなものまであるのかしら……っと、急がないと」

 ヴィアナは慌てて、着ていた服を脱いで、制服に着替える。

 制服は白いレースの襟のついた紺色のシンプルなものだ。袖はふわっとふくらんでいて、二の腕のところからはぴったりと腕に沿っている。袖口にも襟と同じレースが飾られていた。

 制服の上に白いレースのエプロン、ヘッドドレスをつけたら身支度終了だ。鏡を見て、ヘッドドレスが曲がっていないことを確認する。

 お城の使用人は、毎日こんなものを着ないといけないのだから大変だな――と、ちょっとだけ城の使用人に同情した。ヴィアナもそこに加わったわけだけど。

「バートさん、お待たせしました」

 急いで着替えたけれど、それでも思っていたより時間がかかってしまった。

 慌てたヴィアナが隣の部屋に入っていくと、バートはにこにこしながら待っていた。

「大丈夫、焦らなくてもいいよ……ええと、まずは寝室の整え方から」

 ブライアスの寝室は、ヴィアナの寝室と同じくらい広かった。ここを毎日掃除するのがヴィアナの仕事だ。

 ブライアスの寝室の方は、白を基調に整えられていたヴィアナの寝室とは違って落ち着いた茶色を基調に調えられていた。

 壁の本棚には、王城の図書室から持ち出してきた本が置かれていて、机の上にも何冊もの本が積み上げられている。

「机の上に置かれているものには、触らないようにね」
「わかりました」

 その他にも仕事をする上で大事な注意をこまごまと受けた。

 王城ではプロの仕事が求められる。自分のベッドを調える時には見なかったことにするシーツの皺もここでは許されない。

 寝室の確認が終わってから、バートに図書室まで連れて行ってもらう。

 このお城は広いから、地図を持っていないとすぐに迷ってしまうことになりそうだ。

 案内された図書室は、今までいた棟とは違って、ちょっと古い雰囲気だった。もともとはこの棟が王族の私的な空間だったのが、新しい棟を建て増ししたので王族の私室は移動になったのだという。

「……図書室はちょっと遠いんですね」
「迷わないように注意してね。幽霊が出るっていう噂もあるし」
「からかわないでください」
「からかってるように見える?」

 真顔でそういうことを言うのは反則だと思う。こちらの棟は急に雰囲気が暗くなるので、夜に本を返しに来るのはごめんこうむりたいところだ。

 一通りの仕事を教わった時には、完全にくたびれ果てていた。そんなヴィアナに向かって、バートは言う。

「もう少し仕事に慣れたら、君に家庭教師をつけるから」
「か、家庭教師……ですか?」

 実家にいる時に、きちんと家庭教師について学んできたから、最低限必要な教養は身に着けていると思う。

 そう反論したら、バートはふぅっとため息をついた。

「もちろん、君に文句があるわけじゃないよ、ヴィアナ。ただ、ここはお城だからね。君のマナーがなってないとブライアス様が悪く言われることになるし、お城にはお城の特殊な決まりがいろいろあるから」
「あ……ご、ごめんなさい。そうですよね」

 ヴィアナはうつむいてしまった。

 自分では恥ずかしくないだけの行儀作法を身につけてきたと思っていたけれど、王城で働くにはきっといろいろ足りていないのだろう。

「素直なのが、君のいいところだよ。忙しくなると思うけど、君ならがんばれるよね」
「はい、頑張ります!」

(……ブライアス様の役にたてるんだもの)

 わざわざヴィアナのために家庭教師をつけてくれようというのだ。きちんと勉強しないと罰があたってしまう。

「お城の使用人って大変なんですね……」

 十五歳の時に家庭教師は卒業して、もう勉強しなくてもいいと思っていたヴィアナはちょっぴりげんなりしたけれど、王宮で働く以上みっともない真似はできない。

「……あら?」

 不意に、ヴィアナは気がついた。身分の高い人に会うかもしれないという話だったけれど、国王夫妻にはまだ会っていない。

 いや、ヴィアナ程度の存在を雇ったところでいちいち顔を合わせる必要もないのだろうけれど、今日一日遠くからちらっと見る機会さえなかった。

「あの、王様と王妃様はどちらにいらっしゃるんですか? 今日、お見かけしなかった気がするんですけど」
「ああ……国王夫妻ね」

 ヴィアナに問いかけられたら、なぜだかバートはちょっぴり遠い目になった。それから、そんな顔をしてしまったことを隠すように首をぶんぶんと振る。

「細かいことは、気にしなくていいよ――国王夫妻は、今は休養中なんだ」
「休養中?」
「ああ、ほら……退位を決めて半分引退というか……もちろん、ブライアス様の手に負えないことが出てきたらすぐに対処できるようにはしてるんだけど、遠くから見守っているという感じかな。今はお二人でのんびり過ごしてらっしゃるよ」
「……そうなんですね」

 国王夫妻を遠くからでも見ることができたなら、家族への自慢話になると思ったのに。

 とはいえ、これからずっとお城で働くのだから、いずれどこかで見かける機会くらいはあるだろう。

 使用人達は、お城の一角にある使用人用の食堂で食事をすることになっている。ヴィアナがそこに駆けつけた時には、大半の人が食べ終えて席を立ったあとだった。

 食堂にはいくつものテーブルが並んでいて、皆、思い思いに食事をしている。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。

2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(10)      えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(12) 
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Date:2017/02/11
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