迷宮金魚

□ えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ! 試し読み □

えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(16)

 
 けれど、今日はいつもとは違っていた。時間になってヴィアナが寝室に入っても、まだ彼は姿を見せない。

(今日は遅くなるって話は聞いていないんだけれど……バートさんが伝言を伝えるのを忘れたのかしら)

 もし、予定に変更がある場合は、バートが全て伝えてくれることになっている。けれど、今日は特に遅くなるような話は聞いていない。

(……待っていたら、すぐに来るわね)

 ランプの火を調節し、ベッドの側に置かれている椅子に腰掛けて待つ。

(昨日……あんなことがあったから)

 昨夜は、彼が眠りに落ちるまで、懐かしい物語を朗読した。それから、そっと部屋に戻った。今朝のブライアスは早起きをしたみたいで、顔は合わせなかった。

 ヴィアナにとっては、一大事件だったけれど――きっと、ブライアスにとってはたいした問題ではなかったのだろう。

 ひょっとしたら、気まずさを覚えているのはヴィアナだけなのかもしれなかった。

(……遅い、な……)

 ブライアスがいつも眠りにつく時間は、とっくに過ぎてしまっている。けれど、いつまで待っても彼は来なかった。

 今日の授業も厳しかったし、実を言うと昨夜はあまり眠れなかった。待っていなければと思うのに、こくり、とヴィアナの首が揺れる。

(だめ……これはよくない……のに……)

 主の前で眠るなどと言う失態は、一度犯せば十分だ。それに、昨日彼の前でうとうとしてしまったら、とんでもないことになったじゃないか。

 そうやって自分を責める声も聞こえてくるけれど、連日の疲れと昨夜の疲れがヴィアナの緊張感を奪っていく。

 それに、この椅子はとても座り心地がいいのだ。立ち上がって眠気を覚まそうと試みたけれど、簡単にヴィアナの意識は睡魔に乗っ取られた。


 
 そっと揺すられて、柔らかいものが頬に触れる。

 ふぁ、とあくびをして、ヴィアナはさらにそれに身を寄せ――次の瞬間飛び起きた。

「なんで? なんで?」

 最後の記憶では、ブライアスの帰りを待って椅子に座っていたはずだ。起き上がって眠気を追い払おうとしたけれどそれは無理で――。

「なんで?」

 どうして、隣にブライアスが寝ているのだろう――というか、ここはブライアスのベッドだ。

(……まさか、まさか!)

 恐慌状態で自分を見下ろせば、大丈夫、きちんと制服は身に着けている――靴は履いていない。ベッドから飛び降りようとしたけれど、背後から腰を抱え込まれた。

「こら、抱き枕が勝手に脱走するな」
「きゃあっ! 待って、待って――私、そんなんじゃ」
「俺の部屋で居眠りする方が悪い」
「ご――ごめんなさい……!」

 もっと何か言わなければならないことがあるだろうに、それ以外口から出てこない。じたばたとしていたら、ブライアスがぐっとヴィアナをシーツに押しつけた。

 ひゅうっとヴィアナの喉が鳴って、ヴィアナをベッドに押し倒してのしかかってきたブライアスが首を傾げる。

 こんな状況だというのに、胸がどきりと音を立てた。

 至近距離からヴィアナを見つめる真っ黒な瞳。夜空を連想させるそれに吸い込まれそうで、視線をさ迷わせればきつく結ばれた形のいい唇が目に飛び込んでくる。

 昨夜、あの唇が自分の唇に重ねられたことを思い出して、ヴィアナはうろたえた。

「……どうして」

 じわりと目に涙が浮かぶ。王太子殿下の部屋で眠ってしまったのは失態だけれど、抱き枕にしなくてもいいじゃないか。

「どうしてって――ヴィアナが好きだからに決まってるだろ」
「でもっ」

 そう反論しかけたけれど、心の片隅からは喜ぶ声が聞こえてくる。

(……夢だったら、迷わず受け入れられたのに)

「でもですね……ブライアス様、私達……そういう関係、では」

 視線を揺らして口にした言葉は、自分でも説得力がないと思う。

「そういう関係って、どんな関係だ。誰だ、まったく。こんながちがちな制服に決めたのは」

 彼の手が、白いレースの襟元から、胸の方へとすぅっと撫で下ろしてくる。今までそんな感覚は知らなかったから、ヴィアナは身を震わせた。

「だめっ」

 慌てて彼を押しのけようとするけれど、成人男性がヴィアナの細腕で動かせるはずもない。彼の胸に突いた手が、そのまま外されてシーツの上に落ちる。

「――さっき言ったろ。俺の前で居眠りするヴィアナが悪い」

 そう言われてしまうと立つ瀬がなくて、ヴィアナはまた、うろうろと視線を泳がせた。自分が悪いのはわかっている――わかっているつもり、だ。

 ブライアスの部屋で、こんな風に居眠りするつもりなんてなかった。連日の授業と仕事で疲れていたなんて言い訳にもならない。

「……お願い、ブライアス様……あっ」

 不意打ちでキスされて、ヴィアナは目を見開く。慌てて足をばたばたさせたけれど、そんなのなんの抵抗にもならなかった。

「やぁっ……んっ、ん、ん」

 角度を変えて、啄むように口づけられる。それは昨夜与えられたキスよりずっと甘くて切なかった。

「……あっ、ブライアス様……だめ……」

 あっという間にヴィアナの身体からは力が抜けて、だめという声とは裏腹な甘ったるい口調で訴えかける。

 ――もし、許されるのなら。

 ヴィアナだって、ずっと彼とこうしていたかった。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。



2017年7月1日発売
パーフェクト愛され人生確定…ですか? 転生したらメロ甘陛下のおさな妻(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(15) 
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Date:2017/02/16
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