迷宮金魚

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2018年3月1日発売
若奥様は愛されすぎて困惑中! 旦那様は超☆絶倫!(ジュエル文庫)
電子書籍 2018年6月1日配信開始 
皇帝陛下は花嫁狩り ~いきなり私が皇妃様!?~(LUNA文庫)

    第一章 彼の心を掴むのです!(6)       第一章 彼の心を掴むのです!(8)  
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□ インテリ公爵さま、新婚いきなりオオカミ化ですかっ! わたし、押しかけ花嫁でしたよね?  試し読み □

第一章 彼の心を掴むのです!(7)

 
「……ま、待ってください!」

 庭に飛び出したところで、腕を掴んで引き留められる。涙まじりの目で振り返ったら、シアラの腕を掴んでいたのはレミアスだった。

 彼がこちらを真剣な目で見ているから、シアラは瞬きを繰り返して涙を追い払おうとした。

「大丈夫ですか。いきなり走り出したので、びっくりしました」

「い、いえ……あの、本当に申し訳なく……」

 どうしよう、先ほどまでとは違う意味でレミアスの顔を見ることができない。彼に取られた腕から伝わってくる手の感触だけで、頭がくらくらしてくる。

 三ヵ月しかないのに、しょっぱなからやらかしてしまった。

「いえ、何もないのならよいのです。あとのことは、エグモントに聞いてください」

「……はい」

 シアラの発言は、レミアスにとってはさほど深い意味にはとられなかったようだ。しゅんとなったシアラの手を放し、彼は城内へと戻っていく。

(……そうよね、私なんて)

 たぶん、最初に出会ったあの日のことを覚えているのはシアラだけ。きっとそういうことなんだろう。

 ――だけど。

(今のレミアス様の表情……すっごく素敵、だった――!)

 行儀見習いに来てよかった点の一つは、直接彼と顔を合わせる機会を得られたということだ。なにせ、シアラは隣国の人間だ。ポラルーンと父の領地が境を接しているとはいえ、ポラルーンの情報なんてなかなか入ってこない。

 そんな中、ごくたまに入手できたレミアスの絵姿を、大事に大事に枕の下にしまって眠りにつく。

 十年以上もの間、そんな日々を過ごしていたから、『生レミアス』は非常に貴重な経験だった。

(とりあえず、心のレミアス様手帖に記録しとかなきゃ……!)

 しかも腕まで掴まれてしまったのだ。なんて幸せなんだろう。

 自分がしでかした発言のことは、完全に忘れ去り、別れたところでせわしなく表情を変えていたら、脇から出てきた腕にひょいと抱えあげられた。

「ぎゃあああ! 人さらいぃぃぃぃ!」

「何が人さらいだ、このバカ娘!」

「バカ娘って失礼ですね!」

 手足をじたばた振り回し、叫んでから気が付いた。シアラを担いでいるのは、レミアスの執務室で顔を合わせたばかりのクルトではないか。

 担ぎ上げられたクルトの肩の上でしゅんとしていたら、彼は庭の方へとずんずん歩いて行って、とんとシアラをベンチに下ろす。

「立ったままころころ表情変えていたから、気になってな。少しは落ち着いたか?」

「あの、その……とんだご迷惑をおかけしまして」

 ころころ表情変えてたって、あの顔を見られてたのか!

 いたたまれなくて両手で自分の頬を挟み、視線をうろうろとさせてしまう。ベンチに腰をかけたシアラの前に膝をついたクルトはくっくと肩を揺らして笑った。

「まあ、あれは傑作だったな。あのレミアスがぽかーんと口を開けて、お前を見てたぞ。そのあとすぐに追いかけてたけどな」

「私だって……好きで、あんなことを口走ったわけじゃ」

 もぞもぞと動いたシアラの手が、胸元へと伸びてそこにある指輪をぎゅっと押さえつける。ちゃんと挨拶したかったのに、最初から失敗してしまった。

「レミアスと結婚したいと思っている女はそれこそ掃いて捨てるほどいるが、本人の目の前で口にしたのはシアラが初めてだな」

「忘れてください、あの発言は」

 穴があったら入りたい。いや、穴がなくても自分で掘って埋まりたい。指輪の感触を確かめながら、さきほど追い払ったばかりの涙がぼろっと零れ落ちた。

「おいおい、泣くなよ! 俺が泣かせたみたいじゃないか……ほら、ハンカチ使え」

「うぅ……本当に、ご迷惑をおかけしまして」

「鼻をかんでもいいんだぞ」

「それは遠慮しておきますぅぅぅ……」

 いくらなんでも異性の前で鼻をかむとかありえない。ハンカチでそっと涙を押さえてから、借りたハンカチを膝の上に置いた。

「金と身分のある男がいいなら、俺とかどう? これでもけっこうモテるんだけど」

「お気持ちはありがたいんですけど、遠慮しておきます」

 クルトの口調から、本気で言っているわけではないことくらいシアラにもわかる。にっこりとして、同じく軽い口調で返してみた。

「わあ、残念。そんなにレミアスが好きなのか? 初対面だろ? あれか? ポラルーン公爵の金と地位につられたとか?」

 そう問いかけるクルトの口調は遠慮がない。

「レミアス様は……好きとかそんなことではなくて、私はレミアス様しか見てないです。ポラルーン公爵の地位とか財産とか、そんなのもどうでもいいです」

 もう一番恥ずかしいところを見られてしまっているのだから、今さら取り繕う必要もないだろう。レミアスは、シアラのことなんて完全に忘れていたようであるし。

 十年以上前、シアラが六歳の時に『薔薇の大祭』を見に来たこと。知らない男の子に、『薔薇の女王』からもらった弓矢のおもちゃを取り上げられてしまったこと。

 わぁわぁ泣いていたシアラに、銀の指輪をくれたのがレミアスであったことも――全部しゃべってしまう。

「それで、レミアスの嫁になるってお前、ずいぶん単純なんだな」

「幼女の思い込みを舐めてはいけません」

 ちっちと指を振ってクルトに宣言すると、彼はものすごく微妙な表情になった。

「思い込むのはいいけどな、公爵の妻になるってどういうことかちゃんとわかってるのか?」「レミアス様のお嫁さんになるんだって決めた時から、公爵に嫁いでも困らないようにちゃんと準備はしてきたんですよ」

 クルトが笑うから、シアラの方も笑いながら返した。一応、えへんと胸も張っておく。重ねた努力は、誰にも否定はできないはずだ。


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Date:2018/10/04
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