迷宮金魚

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2018年3月1日発売
若奥様は愛されすぎて困惑中! 旦那様は超☆絶倫!(ジュエル文庫)
電子書籍 2018年6月1日配信開始 
皇帝陛下は花嫁狩り ~いきなり私が皇妃様!?~(LUNA文庫)

    第一章 彼の心を掴むのです!(8)  
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電子書籍



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第一章 彼の心を掴むのです!(9)

 
「……行儀見習いに来た女性には、この部屋を使ってもらうことにしている。たいてい、近辺の豪商の娘だから、君には質素かもしれないね」

「いえ、十分です。ありがとうございます」

 シアラは鞄をテーブルに置いて周囲を見回した。

 部屋はさほど広くはない。天蓋のない、簡素な形のベッドが一台。それから、食事をしたり、本を読んだり、手紙を書いたりと多目的に使用されるであろうテーブルが一つ。

 クローゼットは壁に作り付けで、あとは棚が一つだけ。あとは身動きするのがやっとというくらいの広さしかなかった。

(……これで十分と言えば、十分なのよね)

 シアラの役割は、ここで働くことだ。ドレスも、一人で着られる動きやすいものを持ってくるようにという指定があった。制服は、行儀見習いの娘達にまでは支給されないからだ。

 実家にいた頃も、侍女に支度を手伝わせるのは年に数回のパーティーの時だけなので、基本的には問題ない。

 緑のカーテンがかけられた窓は出窓になっていて、そこには白い花が一輪挿しに飾られていた。

(……そうね、しっかりしなくちゃ)

 思いがけずクルトの協力が得られることになったけれど、三ヵ月しか時間はない。両親の進める縁談が、どこの誰なのかも聞いていないけれど。

 とにかく、明日からの仕事を頑張ることにしよう。

 そう決めると、シアラは勢いよく荷物を解き始め、その夜はぐっすりと眠った。



 ◇ ◇ ◇



 明るい灰色のドレスは、襟元だけレースがつけられている。スカートは細身で、動きやすいように少し短め。歩きやすくてしっかりした靴を履き、白いレースのエプロンをつける。髪を二つに分けてリボンで束ねたら、シアラの身支度は完了だ。

 使用人達の食堂で供される朝食は、チーズとハムを挟んだサンドイッチに、野菜とベーコンが入ったスープ。豆の煮物というメニューだ。希望者には、新鮮な果物も用意されている。

(……ポラルーン領って裕福なんだわ)

 この地は豊かであるために何かと争いの種になっていることは聞いてはいたけれど、それを目の当たりにしてシアラは感心の声を漏らした。

 少なくとも、シアラの生家では朝食にまでチーズとハムは出さない。バターを塗ったパンにスープくらいだろうか。前の晩の残り物があればそこに追加されることもあるけれど、果物は夕食のあとにしか食べない。

「エグモントさん、おはようございます」

「おはよう、シアラ。君の仕事は、まずは帳簿付けの手伝い。それから――」

 朝食をすませてから、エグモントのところへと向かう。仕事の打ち合わせをしていたら、脇からクルトが口をはさんできた。

「それが終わったら、俺が借りてもいいか? 庭の薬草園の手伝いが欲しい。昨日聞いたら、薬学の初歩も押さえてるみたいだからな」

「――他にやってほしいことがあるんだけどな」

「頼む。まあいいだろ?」

 クルトが両手を合わせて拝むと、エグモントはしかたないというように大きくため息をついた。

「しかたないな――本来なら、よそから行儀見習いに来たお嬢さんをあてにするなんてあってはいけない話だぞ」

「まあまあそう言うなって。俺の部署、男ばかりで潤いが足りないんだよ、潤いが――人手なら足りてるが潤いが欲しい」 

 あくまでもチャラチャラしているクルトの言葉に、エグモントはあきれたみたいなため息をついた。だが、午後からはクルトの手伝いに回ることが決められて、ようやく仕事を始めることができた。

「行儀見習いっていっても、君の場合はうちの城で働いたという箔がつけばいいんだよね。あと隣の領地の人だし、ポラルーン領についても学んだ方がいいと思う。今度街の見学に出られるようにしておくよ」

「ありがとうございます」

 ポラルーン領について学ぶのは、両親からも言われていた。自分できちんと現地の空気を感じてこいと。両親の言うことももっともなので、シアラもおとなしく両親の言葉に従うつもりでいた。

 エグモントの言う帳簿付けの手伝いとは、帳簿の記載をシアラが計算し、それをエグモントが計算するという二度チェックだ。機密にかかわるところは当然出されず、城内の食料の買い付けだのシーツや制服の支払いと言った日常にかかわる部分だけだ。

「おや。君は計算が速くて正確だね」

「一応、領主の娘ですので!」

「それは、助かるよ。じゃあ、こちらの帳簿付けも手伝ってもらおうかな」

 エグモントが引っ張り出してきたのは、城内の食料品の注文をまとめている帳簿だった。小麦、大麦、砂糖、塩。肉に魚、野菜からビールやワインといった酒類まで。多数の品を扱っている。

「僕、君に謝らないといけないことがあるんだよね」

「なんですか?」

 エグモントがシアラに謝らないといけないことって、何だろうか。ペンを置き、ちょっと身構えたら、その様子にエグモントは小さく笑った。

(……あ、ちょっと似てるかも)

 従兄弟という血のつながりがあるからだろうか。笑ったエグモントは、どことなくレミアスに似ている。

 思わずぽっとしかけて――だって、レミアスに似ているのだからしかたない――慌てて首を振ったら、エグモントは軽やかに笑った。


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若奥様は愛されすぎて困惑中! 旦那様は超☆絶倫!(ジュエル文庫)
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Date:2018/10/06
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