迷宮金魚

□ 追放聖女はシンデレラ 俺様魔王に溺愛されて幸せです □

第一章 置き去りにされた聖女は魔王の城にとらわれて?(7)

 


 ◇ ◇ ◇



部屋を出てもいいと言われてから数日後。やっと厨房を使ってもいいという許可が下りた。

「ふふ、アマリエ様とお揃いですね!」

「あのドレスは汚したくないから、よかったわ」

 今日、厨房に行くにあたってアマリエが着たのはティカとお揃いのメイド服だ。

厨房に立つのにあの衣服では不便だと言ったら、すぐに用意してくれた。

 ティカに案内されて厨房に行ったアマリエは、あまりにも広いので驚いてしまった。

「どうして、こんなに広いのかしら……」

 食事を必要とする魔族達の食事は別の厨房で用意されるため、ここで調理されるのはヴァラデルとアマリエの食事くらいのもののはず。

 それなのに、この厨房はとても、広い。

「たまにお客様を呼ぶですよ。他の魔王様と、その配下とか。数百の魔物が集うこともあるので、このくらいは必要なのです」

「……ああ、そうか。他に二人の魔王がいるんだものね」

 魔王とその配下とか魔王軍の重鎮とか。アマリエが倒してきたセエレの配下の数を考えるとけっこういそうな気がする。

 数百もの魔族が集まるのであれば、たしかにこのくらいの厨房は必要だろう。

「ざ、材料は……バターとか卵とかあるのかしら?」

「あります! ロック鳥の卵と、スターカウの乳から作ったバター。スターカウの乳は、人間の言う牛乳と近い味ですよ!」

「そっか。ちょっと違うのかしら……じゃあ、材料を見せて――って、これちょっと無理でしょう!」

 ロック鳥とは、巨大な鳥型の魔物だ。最大のものは、島一つ覆うくらい大きいなんて伝説もあるけれど、それはあくまでも伝説。

 比較的よく見られるのは、片方の翼だけでアマリエ一人分と同じくらいの長さのある鳥だ。毒は持っていないし、肉は魔物の中でも美味だ。

 だが、卵を見る機会なんてあるはずもなくて、ロック鳥の卵を見るのは初めてだった。

「こ、これを割るなんて……! 無理でしょう!」

 ティカが棚から取り出してきたのは、ティカの上半身と同じくらいの大きさのある卵だった。

 よろめきもせず抱えているところを見ると、さほど重くないかもしれないけれど、いかにも頑丈そうな殻だ。

「大丈夫です。これで割るです。アマリエ様無理なら、ティカが割ります」

「……ハンマー!」

 大きな金属のボウルの中にロック鳥の卵を置いたティカが取り出したのは、厨房にあるには不似合いなくらい大きなハンマーだった。

 けれど、この卵を割るためには、そのくらいの大きさのハンマーが必須なのかもしれない。

「ちょっと貸してみて――えいっ!」

 ティカから、ハンマーを借りて叩いてみる。いい音を立ててぶつかったけれど、勢いよく跳ね返された。

「い……いたぁい……」

 手がじぃんと痺れて、思わず涙目になる。そんなアマリエを見ていたティカがふふんと笑った。

「これは、半端な魔族では割るのも難しいです。ティカくらいの『ツワモノ』にならないと無理なのですよ!」

 アマリエの手から、ハンマーを受け取ったティカはにやり。

そして、彼女の手が、勢いよくハンマーに叩きつけられた。

 ごぉんっ! と、音がしたかと思ったら、卵にぴしりとヒビが入る。

「ロック鳥の卵の殻が硬いのは、この殻を破れないようなひな鳥は、出てきても生きていくことができないからです。この鳥、生まれるのさえ難しいのですよ」

「……そうなのね……」

 思わず見たことのないロック鳥の雛に同情した。


2019年1月25日発売
追放聖女はシンデレラ 俺様魔王に溺愛されて幸せです(ジュエルブックス)
電子書籍 2018年6月1日配信開始 
皇帝陛下は花嫁狩り ~いきなり私が皇妃様!?~(LUNA文庫)

    第一章 置き去りにされた聖女は魔王の城にとらわれて?(6)      第一章 置き去りにされた聖女は魔王の城にとらわれて?(8) 
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Date:2019/02/06
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