迷宮金魚

□ 追放聖女はシンデレラ 俺様魔王に溺愛されて幸せです □

第一章 置き去りにされた聖女は魔王の城にとらわれて?(8)

 
 それから、スターカウの乳。額に星のあざがあり、通常の牛の倍程度の大きさがある牛のことだ。

 この牛は非常に獰猛で牛の姿をしているくせに肉食だ。人間をその角でひっかけて殺してしまうこともある。角は非常に重宝されていて、削って粉にすると滋養強壮にいいとされている。

「――ん、おいしい」

 スターカウの乳なんて飲んだことなかったけれど、アマリエがよく知っている牛の乳より、ほんの少し甘い。魔物からこんな乳がとれるなんて。

 それから、その乳から作ったバターも濃厚でおいしい。人間の世界で作られているバターの最上級の品と同じくらいの品質なのではないだろうか。

 アマリエが、その品質のバターを知っているのは勇者パーティーの一行として、ある貴族の屋敷で歓待されたからだったりする。

 それから城の果樹園で取れるナッツ類に生の果物。果物を乾燥させたドライフルーツにシロップ漬けもある。アーモンド粉や小麦粉、砂糖やチョコレートは、ここから一番近いのサウル町で買ってきたものらしい。

砂糖の缶を取り出しながら、ティカはしょんぼりと首を振った。

「シュガートゲトゲっていう植物型の魔物から取れる砂糖もおいしいんです。ちょっと今彼らから砂糖を取るのは禁止なのです」

「あら、どうして?」

「絶滅危惧です! 馬鹿な魔物が食べつくしかけたです。もうちょっと数が回復するまでお預けです」

「そ、そうなのね……」

 魔族の世界もいろいろあるものらしい。けれど、砂糖があるからとりあえずは問題ない。

「じゃあ、まずはパウンドケーキを作りましょう! この厨房のオーブンの使い方も確認したいし」

 厨房に置かれていた壺を調べ、ドライフルーツを見つけ出す。それからチョコレートとナッツを刻んで使うことにした。

 ドライフルーツのパウンドケーキとチョコレートとナッツのパウンドケーキ二種類だ。

 さっそく材料をはかって、作業にかかる。こうやって、自分の手を動かしてお菓子を作るのは久しぶりだ。

「ティカ、そっちはどう?」

「んー、いい匂いです! それにおいしい」

「まだチョコレート刻んだだけだから」

 チョコレートを細かく砕く作業をしていたティカが鼻をひくひくさせ、口をもぐもぐ動かしている。チョコレートを刻む次いでにつまみ食いをしたみたいだ。

ヴァラデル一人に渡すには多いだろうし、ティカにも分けてあげよう。それから、この城で働いている他の家妖精達にも。

 数百体の魔族の食事を作ることもあるため、厨房には調理器具もたくさん揃えられている。ケーキ型もなん十本もあったので、とりあえず四本焼いてみることにした。

「ああ、やっぱり途中で入れ替えないとだめね」

 巨大なオーブンの前に立ち、アマリエは生地の様子をうかがっている。右側は火力が強くなりがちのようだ。時間を見計らって、前後左右を入れ替える。

 そうしているうちに、ケーキの焼きあがる甘い香りが漂い始めた。一晩寝かせたら、彼に渡すことにしよう。


2019年1月25日発売
追放聖女はシンデレラ 俺様魔王に溺愛されて幸せです(ジュエルブックス)
電子書籍 2018年6月1日配信開始 
皇帝陛下は花嫁狩り ~いきなり私が皇妃様!?~(LUNA文庫)

    第一章 置き去りにされた聖女は魔王の城にとらわれて?(7)      第二章 魔王城の意外と平和な日々(1) 
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Date:2019/02/07
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