迷宮金魚

□ 追放聖女はシンデレラ 俺様魔王に溺愛されて幸せです □

第二章 魔王城の意外と平和な日々(3)

 
「治りました? まだ痛いですか?」

「い、いや……なぜ、儂に治癒魔法をかけたのだ?」

「だって、腰が痛かったのでしょう? あなたは、私に攻撃する意志はもってなさそうだったし。あ、嫌でした? ひょっとして、魔族は治癒魔法かけられると痛かったりします? 悪化しちゃった?」

 魔族も治癒魔法を使うが、人間の治癒魔法と異なっていたら、どうしよう。ひょっとして、ぎっくり腰を悪化させてしまったのではないだろうか。

 急におろおろし始めたアマリエの様子がおかしかったらしくて、相手は不意に肩を揺すって笑い始める。

「いや、お嬢さん――いや、アマリエさんの治癒魔法はよく効いたよ。ありがとう」

「お役に立ててよかったです」

「当然! アマリエ様は、魔王様が見込んだ人ですからね!」

 隣でティカがなぜかえへんと胸を張った。

「儂は、人間の見方を考え直さないといけないかもしれないな」

「ヴァラデルさんに、親切にしてもらったお礼です! 受けた恩は返さねば!」

 そこまで口にして、アマリエはふっと気がついた。

 アマリエが一番役に立つのは、ここではないだろうか。

「あのですね、このお城に、他に腰を痛めたり、怪我をしたりしてる人はいませんか?」

「そりゃ、いなくはないが」

「皆さん、どうしてるんです?」

「治癒魔法を使える者が、この城にはあまり多くないのでな。ヴァラデル様の手をいちいち煩わせるわけにもいかないし、たいていは回復薬を飲んで治るを待つ」

「私に、お手伝いさせてください! 治癒魔法くらいなら、すごく簡単なので!」

 アマリエの申し出に、相手はまたまた目を丸くする。

 それから、ポンと手を打つと、彼はアマリエに向かってついてくるように合図した。

「えー、アマリエ様、ケーキはどうするんですか? ティカのクッキーは?」

「診療所のお手伝いが終わったら厨房に行きましょ。だいたい、妬くのは明日で今日は材料をチェックするだけよ? あとでもいいわ」

 アマリエが彼について歩き始めると、ぷぅぷぅ言いながらもティカは後をついてくる。なんだかんだ言いながらも、最大限アマリエの意思を尊重してくれるつもりのようだった。



 一応、魔王の城にも診療所というものがあるらしい。

 医師もいるけれど、治癒魔法は使えないらしい。看護師の中に、治癒魔法を使えるものがいて、必要とあらばそこで魔法をかけてもらう仕組みになっているようだ。

 今、アマリエが見ているのは巨大なカタツムリの形をした魔族だった。

「はい、お口あーんしてくださいー。これは、喉の風邪ですね! 魔法でも治せますが、たぶん、薬を飲んだ方が楽に治ると思います。薬はあちらでもらってくださいな」

あーんと口を開けた先、喉の奥が真っ赤になっている。

 病気の回復には治癒魔法とは別の魔法を使うのだが、そちらは非常に体力を消耗する。軽い喉の風邪くらいなら、薬で治した方が効果的だ。

 あっという間に、アマリエの前には行列ができていた。

「次の方、どうぞ! 横入りはだめなのです! ちゃんと列に並んでくださいです!」

 行列をさばいてくれているのはティカだ。ティカが患者をきちんと並ばせてくれるので、集中して診察と治療にあてることにできるからありがたい。


2019年1月25日発売
追放聖女はシンデレラ 俺様魔王に溺愛されて幸せです(ジュエルブックス)
電子書籍 2018年6月1日配信開始 
皇帝陛下は花嫁狩り ~いきなり私が皇妃様!?~(LUNA文庫)

    第二章 魔王城の意外と平和な日々(2)      第二章 魔王城の意外と平和な日々(4) 
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Date:2019/02/09
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