迷宮金魚

□ 王宮美術館で悪魔はささやく □

王宮美術館で悪魔はささやく 二話

 
「……シュカ……エリシュカ……」
 ゆらゆらと揺れる意識の中、エリシュカは思い瞼をこじ開けようとする。
「そろそろ起きてくれないと困るんだけど」
「……嘘っ!」
 叫ぶなり、エリシュカはソファから下りようとするが、しっかりとした腕に抱え込まれてしまう。

「……シュテファン様っ、どうして……!」
 ――落ち着け、落ち着け、落ち着きなさい、エリシュカ! 落ち着きなさいって言ってるでしょ!
 エリシュカは必死に自分に言い聞かせる――それはなかなか難しいことでもあった。
 身につけていた青のデイドレスは、背中のボタンが腰まで外されているし、コルセットの紐まで緩められている。おまけにスカートは腿の半ばまで捲り上げられているのだ。
 ――つまり、今のエリシュカはとてつもなくはしたない恰好になっているわけで――。
 おまけにソファに押し倒されて、シュテファンの腕に囲われているという状況だ。これで落ち着いていられる方がおかしいと思う。

「……どうして……!」
「どうしてって……午後は嵐になりそうだから」
 涼しい顔でシュテファンは言った。
「美術品の手入れに来てもらっている人達も帰してしまったし、もともとここを訪れる人なんてほとんどいないしね。俺も帰ろうと思って、最後に館内を回っていたら君を見つけだしたというわけだ」
「……せ、説明になっていませんっ!」

 それならただ起こしてくれればいいのに。こんなところでエリシュカが半裸になっている理由には絶対にならない。
「ずいぶんぐっすり眠っていたからね。起こすのは気の毒だし……寝苦しそうだったから、少し緩めておいたんだけど」
「……も、もう起きました……!」

 大きなお世話だと言いたいのは山々だったけれど、シュテファンを怒らせるのは得策ではないことくらいわかる。言いたいことは飲み込んで、自分の身なりを整えることにした。
 コルセットの紐を自分で絞めるのは無理だけれど、捲り上げられたスカートを床へとはたき落とし、腰のあたりまで下ろされてしまったドレスを元の位置まで引き上げようとする。その手が、シュテファンによって押しとどめられた。

「や、やめてください……!」
 手首を掴まれて、エリシュカはますます混乱した。
「ここに居るのは俺と君だけ。俺がこの機会を逃すとでも?」
 エリシュカの目が驚愕に見開かれる。異性と二人きり――しかも自分の着ているものは乱れている状態で――それが意味するところがわからないほど子供ではない。

 あまりのことに、一瞬凍りついたエリシュカだったけれど、次の瞬間、手足をばたばたとさせ始めた。何とかしてシュテファンの腕の中から抜け出さなければ、非常にまずい事態に陥ってしまう。
 身体がぐっとソファに押しつけられたかと思ったら、次の瞬間には唇が奪われていた。

「んっ……あっ……」
 思わずエリシュカは小さな声を上げてしまう。
 容赦なく唇を開いて割り込んできた舌が、エリシュカの舌を探り当てる。シュテファンの舌で舐め回されて、エリシュカの身体から力が抜けた。エリシュカの想像するキスとはあまりにも異なっていた。

 こんな淫らなキスは想像したことさえなかった。口内をかき回され、淫らな水音が響きわたって、エリシュカの聴覚を刺激する。擦り合わされる舌から淫らな疼きが広がって、下肢がじんと痺れてくる。
 身体から力が抜けて、ソファに完全に横たわってしまう。潤んだ目で見上げれば、すぐそこにシュテファンの顔があった。

「あ、の……」
 流れ落ちる髪、こちらを見据えている灰色の瞳。通った鼻筋、薄目の唇。女性達が騒ぐのもよくわかる。まじまじと見つめられて、エリシュカの頬が染まった。彼とこんな距離で見つめ合うことがあるなんて想像したことさえなかった。
 彼とは関わりたくないと思っていたはずなのに、胸がざわついてどうしたらいいのかわからない。

 不意に雷が鳴り響いて、思わず目の前にいたシュテファンにすがりついてしまう。窓枠ががたがたと鳴って、エリシュカの不安をあおった。
「大丈夫、俺がいるから……ほら、力を抜いて」
 背中に回された腕が、優しくエリシュカを抱きしめる。腕の中にいたら、雷も風もどこか遠くの出来事のように感じられた。

「ん、シュテファン……さ、まぁ……」
 再び唇が重ねられる。角度を変えて唇を啄まれ、舌が口内を探る。
 いつの間にか戻したはずのスカートが再び捲り上げられて、シュテファンの手が腿をなぞっている。
 脚の間が疼いて思わず腰をもじもじとさせると、脚の間にシュテファンの手が割り込んでくる。

「あっ……あぁっ……い、やっ……」
 嘘だ。こんなところでこんな恰好をさせられているなんて。エリシュカは必死に抵抗するけれど、足の間にシュテファンの手が入り込んでいるという事実は否定しようもない。
「こんなに濡れて……それでも嫌だと?」
 エリシュカの秘所はすでに潤い始めている。薄布を押しつけるようにさすられれば、あっという間にその布まで潤い始める。ぐいと押し込められれば、濡れていることをまざまざと知らしめられて、エリシュカの羞恥心がますますあおられる。

 シュテファンの手が下着の中に入り込んでくるのを、止める気力も残っていなかった。
 柔襞を割り開いた指が溢れ出した蜜をからめ取る。慎ましやかに身をひそめている秘芽を弾かれて、エリシュカの身体を鋭い快感が走り抜ける。
「んっ……うっ!」
 眉間に皺を寄せて、エリシュカは自分の身体に起こった変化をやり過ごそうとする。乱れた息を気づかれたくなくて、奥歯を噛みしめた。

「いっ……や、あぁ……」
「嫌ならどうしてこんなに濡れているんだろうね?」
「し、知らな……」
 どうして自分の身体がこんな風になってしまうのか、本当にわからなくて、エリシュカの目に涙が浮かぶ。
「んっ……やっ……お願いっ……!」
 秘裂を往復する彼の指が、時々淫芽をかすめていく。その度にエリシュカの身体はソファの上でびくびくと跳ねて、より深い快感をもとめるように身体がしなる。

 シュテファンの指が、快楽の芽を捕らえて左右に揺さぶった。身体の中心を快感の嵐が駆け抜けていく。
「シュテファンさ、ま……やめ、やめてっ……!」
 エリシュカのつま先がぴんと伸びた。
「ん、あっ……あぁぁっ!」
 シュテファンの指先で昇り詰めたエリシュカの身体はソファの上で数回跳ね――そして力を失って、手足が投げ出された。

2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    王宮美術館で悪魔はささやく 一話      王宮美術館で悪魔はささやく 三話 
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Date:2014/08/20
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