迷宮金魚

□ 王宮美術館で悪魔はささやく □

王宮美術館で悪魔はささやく 三話

 
「イッたね、エリシュカ」
 可愛いと言いながらシュテファンが脚の間から手を引き抜く。息を乱したエリシュカの目から涙がこぼれ落ちた。
 こんな場所で、こんな恥ずかしい姿を見せてしまった。しかも相手はシュテファンだ。
 逃れたくても、のしかかった彼はがっしりとエリシュカの身体を押さえ込んでいて、逃げ出す隙なんてない。目を閉じて、身体を震わせる。今日、ここに来なければよかった。そうしていたら、ソファで眠り込むこともなくて、こんな訳のわからない状態に追い込まれることもなかった。

「……どうして」
 それだけを口にするのがやっとだった。
「君がつれないから」
 つれないから、と言われても困る。そもそもエリシュカとシュテファンの間には接点なんて存在しないのだし、ここで顔を合わせた時のような二人きりの時はともかくとして、人前では常に礼儀正しく接してきたつもりだ。

「やめて……ください。こ、これ以上……は……」
 エリシュカの睫が震える。彼の腕から抜け出すのが無理だとすれば、シュテファンの慈悲にすがるしかない。
「やめても、いいよ。君がそう望むのなら――ただ」
 シュテファンは口の端を上げて見せた。
「俺は口が軽いからね。俺の腕の中で達した君がどれだけ可愛かったか、うっかり口を滑らせてしまうかも」
「なっ……」

 そんなことを触れ回られたら、エリシュカがふしだらな行為をしてるようではないか。いや、今の行為をふしだらではないと言い張るつもりもないけれど、すでに純潔を失っているように周囲の人に思われたら困る。
「ねぇ……エリシュカ」
 シュテファンがゆっくりと顔を寄せてくる。
「俺のものになってよ――そうしたら、絶対に人に話したりしないから」

 そう微笑んだ彼はたいそう美しかったけれど、エリシュカには悪魔のようにしか見えなかった。ここで彼を拒んでも、エリシュカの未来は真っ暗だ。
 ――ならば、受け入れて、彼が口を滑らせないことを祈るしかない。勝ち目の少ない賭であるのはわかっていたけれど、エリシュカに他に選択の余地は残されていなかった。
 抵抗する気力を失ったエリシュカの身体から力が抜けた。
「俺のものになるってどういうことかわかっているよね」
 生温かい舌が、頬を濡らす涙を舐めとっているのに逆らうこともできない。豊かな乳房へと彼の手が伸びる。

「んっ……あぁっ」
 指先が、硬くなっている胸の頂をかすめて、滑らかな肌に着地した。かすめられただけなのに、エリシュカの口からは小さな声が上がった。
 下から持ち上げるようにして乳房を揺さぶられる。そんな場所を揺さぶられたことなどあるはずもなく、その感覚にエリシュカはおののいた。
 今まで、シュテファンのことは好きでも嫌いでもなかった――ただ、彼に近寄らない方が平和に暮らせると思っていただけで――でも、こんな風に触れられたら。彼に対する感情が変化してしまいそうで。

「嫌っ……やめてっ……あぅっ!」
 拒否する言葉を口にしながら身を捩れば、硬くなっている胸の頂を指で弾かれる。鋭い刺激に、思わず背中が弓なりになった。
「嫌? 何が? うん、嫌ならここでやめようか」
「や、やめないで……!」
 頬を染めるのは羞恥か屈辱か――それを考える余裕もなかった。くすりと笑ったシュテファンが、強引に上半身を覆っていた下着を引き剥がす。

 床の上にコルセットが放り投げられ、シルクのシュミーズが後を追った。両腕をソファに押しつけられて、露わになった肌を隠すことも許されない。
「ほら、ここ――こんなに硬くなっている。俺に触られて感じた?」
「し……知らないっ……!」
「さっき、あれだけ派手に達していたし、感じていないわけないか」
 その言葉に、先ほど達してしまった時の感覚が、一気に身体を走り抜けたような来した。もぞもぞと腿を擦り合わせてしまう。先ほど触れられた秘芽が疼いて、切なげな吐息が口からこぼれた。

 シュテファンの手が、柔らかな双丘を覆う。そのまま膨らみを寄せたかと思うと、その中心に彼は顔を埋めてくる。
「大きくて柔らかそうで――一度こうしてみたかったんだ。思っていたとおり、すごく柔らかいんだな」
 大きな胸と、対照的に細い腰だけはエリシュカが自分の姿形の中で気に入っている点だった。その点について触れられて、エリシュカの眉が下がる。そんな風に触れて欲しくはなかった。
「あふっ……ん、んんっ……」
 胸の谷間にはシュテファンの舌が這い、両側から持ち上げるように寄せられては離される。感じるなんて間違っているのに、舐められた場所がじんじんとし始める。

「やっ……あんっ!」
 今まで乳房を寄せていた手が、胸の頂で尖っている蕾を探り当てた。左右同時に摘まれ、くりくりと左右に転がされたら、今までとは比べものにならないくらいの快感が下腹部を熱くする。
「やっ……ん、んんっ……ふっ」
 殺さなければと思うのに、こらえきれずに悩ましい声が口からこぼれる。せめてもと指を噛んだら、その手をあっという間に引き剥がされた。

「だめだよ、ちゃんと声を聞かせてくれないと。ねえ、こうされるのは好き?」
「あぁっ!」
 今まで指で転がされていた乳首が、シュテファンの口内に吸い込まれた。舌先でこね回されて、エリシュカの身体はまた新たな快感を知る。
「あっ、あん、やめっ……」
 やめてほしいと言いかけて、エリシュカは唇を噛んだ。もう引き返せないところまで来てしまっている。左側の頂を指で捻られながら、右側の頂を舌で転がされると、甘えたような声と共に肩を揺らしてしまった。

「……可愛いなあ、エリシュカは。顔が赤くなってるの、自分でわかる?」
「か、可愛くなんか……んんっ」
「そうやって快感に耐えているのも可愛いけど――もう一度イッてみる?」
 不吉な言葉に、エリシュカの身体がわなないた。先ほどの感覚をもう一度味わわされたら、自分がどうなってしまうのかわからない。
 そうしている間にもシュテファンの指は休むことなくエリシュカの胸を刺激していて――与えられる快楽は、はけ口を求めて、エリシュカの体内を駆けめぐっていた。

2017年2月1日発売
えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ(ジュエル文庫)
電子書籍 2016年5月25日配信開始 
征服王の激愛 ~人質姫は蜜夜に喘ぐ~(TLスイートノベル)

    王宮美術館で悪魔はささやく 二話      王宮美術館で悪魔はささやく 四話 
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Date:2014/08/25
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