迷宮金魚

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宇佐川ゆかり

Author:宇佐川ゆかり
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「熱愛皇帝の甘い鎖」にお問い合わせくださった方へ

メールでお返事させていただいたのですが、ひょっとして見えないかも…ということで、こちらでも書いておきます。

編集部に問い合わせたところ、一度は配信されたものの、iBooks側のレギュレーションにより配信停止になったのではないかとのことでした。

こういうケースの場合、もう一度配信される可能性は低いみたいなので、ほかのサイトを見たほうが早いかもしれません。
また、詳しく状況を知りたいということでしたら、直接iBooksへの問い合わせて頂くしかないとのことでした。

お力になれず申し訳ありません…!
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えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(16)

 けれど、今日はいつもとは違っていた。時間になってヴィアナが寝室に入っても、まだ彼は姿を見せない。

(今日は遅くなるって話は聞いていないんだけれど……バートさんが伝言を伝えるのを忘れたのかしら)

 もし、予定に変更がある場合は、バートが全て伝えてくれることになっている。けれど、今日は特に遅くなるような話は聞いていない。

(……待っていたら、すぐに来るわね)

 ランプの火を調節し、ベッドの側に置かれている椅子に腰掛けて待つ。

(昨日……あんなことがあったから)

 昨夜は、彼が眠りに落ちるまで、懐かしい物語を朗読した。それから、そっと部屋に戻った。今朝のブライアスは早起きをしたみたいで、顔は合わせなかった。

 ヴィアナにとっては、一大事件だったけれど――きっと、ブライアスにとってはたいした問題ではなかったのだろう。

 ひょっとしたら、気まずさを覚えているのはヴィアナだけなのかもしれなかった。

(……遅い、な……)

 ブライアスがいつも眠りにつく時間は、とっくに過ぎてしまっている。けれど、いつまで待っても彼は来なかった。

 今日の授業も厳しかったし、実を言うと昨夜はあまり眠れなかった。待っていなければと思うのに、こくり、とヴィアナの首が揺れる。

(だめ……これはよくない……のに……)

 主の前で眠るなどと言う失態は、一度犯せば十分だ。それに、昨日彼の前でうとうとしてしまったら、とんでもないことになったじゃないか。

 そうやって自分を責める声も聞こえてくるけれど、連日の疲れと昨夜の疲れがヴィアナの緊張感を奪っていく。

 それに、この椅子はとても座り心地がいいのだ。立ち上がって眠気を覚まそうと試みたけれど、簡単にヴィアナの意識は睡魔に乗っ取られた。


 
 そっと揺すられて、柔らかいものが頬に触れる。

 ふぁ、とあくびをして、ヴィアナはさらにそれに身を寄せ――次の瞬間飛び起きた。

「なんで? なんで?」

 最後の記憶では、ブライアスの帰りを待って椅子に座っていたはずだ。起き上がって眠気を追い払おうとしたけれどそれは無理で――。

「なんで?」

 どうして、隣にブライアスが寝ているのだろう――というか、ここはブライアスのベッドだ。

(……まさか、まさか!)

 恐慌状態で自分を見下ろせば、大丈夫、きちんと制服は身に着けている――靴は履いていない。ベッドから飛び降りようとしたけれど、背後から腰を抱え込まれた。

「こら、抱き枕が勝手に脱走するな」
「きゃあっ! 待って、待って――私、そんなんじゃ」
「俺の部屋で居眠りする方が悪い」
「ご――ごめんなさい……!」

 もっと何か言わなければならないことがあるだろうに、それ以外口から出てこない。じたばたとしていたら、ブライアスがぐっとヴィアナをシーツに押しつけた。

 ひゅうっとヴィアナの喉が鳴って、ヴィアナをベッドに押し倒してのしかかってきたブライアスが首を傾げる。

 こんな状況だというのに、胸がどきりと音を立てた。

 至近距離からヴィアナを見つめる真っ黒な瞳。夜空を連想させるそれに吸い込まれそうで、視線をさ迷わせればきつく結ばれた形のいい唇が目に飛び込んでくる。

 昨夜、あの唇が自分の唇に重ねられたことを思い出して、ヴィアナはうろたえた。

「……どうして」

 じわりと目に涙が浮かぶ。王太子殿下の部屋で眠ってしまったのは失態だけれど、抱き枕にしなくてもいいじゃないか。

「どうしてって――ヴィアナが好きだからに決まってるだろ」
「でもっ」

 そう反論しかけたけれど、心の片隅からは喜ぶ声が聞こえてくる。

(……夢だったら、迷わず受け入れられたのに)

「でもですね……ブライアス様、私達……そういう関係、では」

 視線を揺らして口にした言葉は、自分でも説得力がないと思う。

「そういう関係って、どんな関係だ。誰だ、まったく。こんながちがちな制服に決めたのは」

 彼の手が、白いレースの襟元から、胸の方へとすぅっと撫で下ろしてくる。今までそんな感覚は知らなかったから、ヴィアナは身を震わせた。

「だめっ」

 慌てて彼を押しのけようとするけれど、成人男性がヴィアナの細腕で動かせるはずもない。彼の胸に突いた手が、そのまま外されてシーツの上に落ちる。

「――さっき言ったろ。俺の前で居眠りするヴィアナが悪い」

 そう言われてしまうと立つ瀬がなくて、ヴィアナはまた、うろうろと視線を泳がせた。自分が悪いのはわかっている――わかっているつもり、だ。

 ブライアスの部屋で、こんな風に居眠りするつもりなんてなかった。連日の授業と仕事で疲れていたなんて言い訳にもならない。

「……お願い、ブライアス様……あっ」

 不意打ちでキスされて、ヴィアナは目を見開く。慌てて足をばたばたさせたけれど、そんなのなんの抵抗にもならなかった。

「やぁっ……んっ、ん、ん」

 角度を変えて、啄むように口づけられる。それは昨夜与えられたキスよりずっと甘くて切なかった。

「……あっ、ブライアス様……だめ……」

 あっという間にヴィアナの身体からは力が抜けて、だめという声とは裏腹な甘ったるい口調で訴えかける。

 ――もし、許されるのなら。

 ヴィアナだって、ずっと彼とこうしていたかった。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。


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えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(15)

◇ ◇ ◇
 
 ヴィアナの日課は決まっている。

 朝、ブライアスが朝食に出て行った後、彼の寝室を掃除し、寝具を新しいものと変える。枕元に置く本を変えてほしい時は、ブライアスから図書室にある本を持ってくるようにと指示のメモがある。

 そのメモを片手に図書室に行って本を借りたり返したりしてからがヴィアナの朝食だ。朝食はサンドイッチとお茶に果物が二種類と決まっている。好きなだけ食べられるけれど、具だくさんのサンドイッチだから、二切れでお腹が一杯だ。

 朝食が終わったら、使用人の制服を脱いで、洋服ダンスからドレスを取り出す。

 本当なら、人の手を借りてコルセットをぎちぎちに締め上げなければ着られないドレスだけれど、最近は一人で締められるコルセットというものができたので、他の人の手を借りなくても着ることができる。

「う……もうちょい、締めておいたらよかったかな……」

 上質のサテン、シルク・オーガンジー、シフォン等にレースやリボンをあしらったもの。

 いずれもヴィアナの手が届かないような高価なドレスは、どれも一人で着られるように工夫されたデザインだ。

 改めて教育を受けなければならないヴィアナのために、これだけの用意をするのもどうかと思うけれど。

「今日は、顔色がよくないね。疲れてる?」

 ヴィアナのためにやってくる家庭教師は何人かいるけれど、そのうちの一人はバートだった。

「大丈夫、たいしたことじゃないんです」

 そう言って、ヴィアナは彼の心配を他にそらそうとした。

(言えるはずがない……キス、されただなんて)

 幼い頃親しくしていたことがあったとはいえ、身分の差は超えられるものじゃないと思う。それに、ブライアスは確か昨夜「本気だ」と言っていたようではあるけれど……。

(それだって、本気にしたらいけないと思うの)

 ブライアスが信用できないというわけではなくて……たぶん、彼は現実が見えていないのだ。

 彼ならヴィアナより素敵な女性がいくらでも見つかるはずだ。一回キスしたくらいで浮かれているなんて、自分はどうかしているんじゃないかと思う。

「そう? ブライアス様に何かされたりした?」

 いきなり直球を投げ込まれて、ヴィアナの喉が奇妙な音を立てた。

 何か言わねばならないけれど、そんな問いを真正面からぶつけられると思っていなかったから言葉が出てこない。

「えっと、あのっ」

 ヴィアナが目を瞬かせると、バートは困ったように両腕を広げた。それから、ヴィアナの肩に手を置いて、耳元に口を寄せてくる。

「ブライアス様の言うことは……信じた方がいいと思うよ。あの人はあれで意外と執念深いからね」
「……でも」

 意外と執念深いと言われても困ってしまう。

(信じたって、何も変わるはずないじゃない)

 もし、彼がちょっとだけ身分の高い貴族なら、ヴィアナもまだ夢を見ることができた。

 けれど、現実にはブライアスは王太子でヴィアナはただの娘。彼とヴィアナの間にある壁は、ものすごく高い。その壁を乗り越えるだけの気力はヴィアナにはない。

「……まあ、いいけどね。それを君に信じさせるのも、ブライアス様のやらなければいけないことだと思うし?」

 ぱちり、と彼は片目を閉じる。ヴィアナは首を傾げた。

「あの……バートさん、ひょっとして楽しんでます?」
「すっごく楽しんでるよ」

 悪びれずに言うのだから、彼も質が悪い。ヴィアナはため息をつくと、バートの方に教科書を突き出した。

「今日は、宮中におけるお食事のマナーでしたよね。予習はしてきたので、さっさと始めましょう」

(……考えない考えない。何も考えない方がうまくいくから)

 ヴィアナにできることなんて、たいしてない。

 バートがこうやって教育してくれるのだから、それはありがたく受け入れておくべきで余計なことは考えない方がいい。

 食事のマナーの勉強が終わったら、次は実戦訓練だ。さすがにフルコースとはいかないものの、昼食にはマナーを実践できるだけの料理が並べられる。

 急いで、かつ優雅に、バートの監視のもとでそれを食べ終えた後、他の授業が入る。

「美しく振る舞うためには、裾の裁き方が重要です――と、昨日話しましたよね」
「す、すみません……」

 宮中では、スカートの裾さばき方一つでその人の品位が見えてしまうものらしい。ヴィアナを指導してくれるのは、王妃の指導もしたという年配の女性だった。

(そうね、王妃様は隣の国から嫁いできたんだもの……)

 隣の国とこちらの国では、マナーも多少違うだろう。

 王妃の立ち居振る舞いについて、宮中に入ってから陰口を聞いたことはないから、彼女は先生の言うことをしっかり身に着けたに違いない。

「ヴィアナさん、背筋が曲がっています。背筋はまっすぐに、下は見ない」
「は、はい!」

 たかが使用人のためにドレスを用意するというのは、分不相応だと思っていたけれど、こんな訓練が必要ならドレスが用意されていたのも納得だ。

 広い部屋の中央をひたすら往復するというだけでヴィアナは精一杯だ。

「ヴィアナさん、背筋!」
「ひゃあ!」

 物差しでぴしゃりとお尻を叩かれて、ヴィアナは悲鳴を上げた。

 物差しでお尻を叩く家庭教師なんて、物語の中にしか存在しないと思っていた。まさか、自分がそれを体験することになるなんて。

「……背筋はまっすぐ、前を見て。唇には笑み……ああ、無理……」
「泣き言は言わない、もう一度!」
「うぅ、頑張ります……」

 王妃に教えた家庭教師に教えを請えるなら、いくらお金を積んででも惜しくないという貴族はいっぱいいるだろうしこの機会を有効活用しないと。

 なんて、頭の片隅で貧乏くさいことを考えているうちに、午後の授業も終わりになる。

 日によって、歴史だったり、外交だったり――なぜ使用人が外交を学ぶ必要があるかわからないけれど――周辺諸国の言語だったりと、ヴィアナの学ばなければならないことは多い。

 授業が終わった後は、少しだけ自由時間がもらえるけれど、そこだって予習と復習に当てなければ、授業についていくことができない。

 自由時間が終わったら、すぐに制服に着替えて、次の仕事の準備にかかる。
 ブライアスの寝室が居心地よく整えられているか確認し、室温を調節し、カーテンを閉める。

 それから後はブライアスの予定によって変わってくるけれど、彼が眠りにつく頃に寝室に入ることになっていた。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。
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えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!試し読み(14)

(いつか、なんて……想像していたから、こんなことになるのよ)

 ブライアスとヴィアナが離ればなれになったのは、今から十年前のこと。

 初恋――と、当時のヴィアナがそれを認識していたわけではなかったけれど、今思えば確かに初恋だったのだと思う。

 もし、いつかキスするなら――というふわふわした想像の中の相手は、一緒に遊んだり昼寝をしたりおやつを食べたりした、隣の家に住む年上の少年で。

(……それなのに)

 幼なじみは、王子様になってしまった。

 王子様とヴィアナじゃ釣り合わない。

 初めてのキスは、ブライアスだった――彼の前で拭ってしまった唇に、そっと人差し指で触れてみる。

(本当は、嫌じゃなかった……嫌じゃなかったんじゃなくて、嬉しかった)

 だけど、今のヴィアナはそれを素直に喜べる立場ではない。

 もう一度、唇に指先で触れたとたん、ヴィアナはとんでもないことを思い出した。

(私ったら――仕事放棄してる!)

 ブライアスとの間に何があったのかはともかくとして、ヴィアナの仕事は彼の快適な睡眠を確保すること。それを放棄するだなんてありえない。

 ぐっと両目を拭って、深呼吸一つ。それで、気力を立て直す。

「……失礼、しました。違う本にしましょう」

 扉を開いたら、ちょうどブライアスもこちらの扉に手をかけたところだった。近くで見ると、背が高い分迫力がある。

「――ヴィアナ」
「お休みの時間です――殿下」

 名前で呼べと言われていたけれど、あえてそれはやめる。にっこりとして見上げれば、ブライアスがたじろいだように見えた。

「今のは、謝らないからな! 俺は――」

 そこからなんと続けたかったのか、彼の言葉はそこで途切れてしまった。

 それには気づかないふりをして、ヴィアナはもう一度にっこりとした。

「お休みのお時間です。今度は私じゃなくて、ブライアス様が眠くなる本にしますね。さあ、ベッドに行ってください」

 まだ何か言いたそうにしているブライアスをベッドに押し込んで、ヴィアナは幼い頃何度も読んだ絵本を取り上げた。

こちらは2017年2月1日発売【えっちな王太子殿下に昼も夜も愛されすぎてます お嫁さんは「抱き枕」ではありませんっ!(ジュエル文庫)】の試し読みです。編集部の許可をいただいておりますが、途中までの公開となることをご了承ください。また、最終校正版ではないため、実際の書籍と多少異なるところもございます。
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侍女の困惑 王子の寵愛(11)

 ヴィオレッタと共にアントリム王国に入ってから三日の後――。盛大に華やかに結婚式が執り行われた。
 
 二人の王子が、同時に妃を迎えるというめでたい事態に、アントリム国民達は多いに盛り上がっている。

「ヴィオレッタ様、今日もとてもお綺麗ですね」
「あら、あなたも素敵――でも、今日からはお義姉様って呼んでもらった方がいいのかしら」

 二人のドレスはそれぞれ共通点を持ちながらも、細部で少々違いがある。どちらのドレスも袖はパフスリーブでふわりと膨らましている。
 
 スカートにはクリスタルビーズと真珠で細やかな刺繍が施されていた。
  
 ヴィオレッタのドレスにあしらわれたのは薔薇の刺繍、ルチアのドレスには百合の刺繍、蔓草を巧みに花と絡み合わせたそれは、職人達が精魂込めて作り上げたものだ。

「……お、お義姉様ですか」
「あら、そうでしょう?」
「それはそうですけれど」

 ヴィオレッタとは長い間親しくしてきたが、二人の間には主従の関係が常にあった。その壁をすぐに壊すというのはとても難しい。
 
 ヴィオレッタがいくらそれを望んだとしても。
 
「――遅いわね、二人とも」

 扉の方に目をやって、ヴィオレッタが息をつく。
 
 来妖怪での結婚式はさきほど終えた。これから貴族達を招いた宴に向かうところだというのに,二人ともこの部屋で待たされたままだ。
 
 結婚式から戻ってくる間に乱れた髪や服を整えてくれた侍女達が、ヴィオレッタが機嫌を悪くしたのではないかとそわそわし始めている。
 
「大丈夫よ、機嫌が悪くなったわけではないから」

 侍女達の不安を感じ取ったらしいヴィオレッタはくすりと笑うと、手を振って彼女達を座るようにうながした。
 
「待たせたな、ヴィオレッタ」
「ええ、本当に」

 入ってきたエドウィンは、軽々とヴィオレッタを抱き上げた。はしゃいだ声を上げたヴィオレッタは、彼の首に手を回す。

「見てられないな、そうは思わないか」
「仲がよろしいということではないでしょうか」

 エドウィンと一緒に入ってきたクリストハルトは、兄夫婦の様子を見て、微笑ましそうに笑うとルチアに手を差し伸べた。
 
「俺も、あのくらいした方がいいか?」
「いえ、そこまでしなくても――」
「いや、やっぱりやめておこう」
「――あっ」

 その言葉と同時に、クリストハルトはルチアの膝の裏に手を差し入れたかと思うと、あっという間に抱え上げてしまった。
 
(ヴィオレッタ様が、声を上げたのもわかる気がするわ……)

 上げかけた悲鳴を、ルチアは唇を強く結ぶことでこらえた。
 
 彼に抱き上げられてふわふわとする。自分から彼の首に腕を回した。
 
(――これから、彼と一緒に歩いて行くんだもの)

 首筋に顔を埋めると、緊張が解けていくような気がする。ルチアの耳元で笑い声を上げた彼は、ルチアを床の上に下ろした。

 今日の王子兄弟は、金糸で刺繍を施した真っ白の盛装に身を包んでいる。彼らの黒い髪を、白が引き立てていて、今日はいつもより精悍な雰囲気だ。
 
「兄上、ヴィオレッタ、そろそろ時間だろう?」
「ああ、そうだな」

 クリストハルトの呼びかけに応じて、エドウィンがヴィオレッタを床の上に下ろす。しかたがないわね、というようにヴィオレッタは笑っていたけれど、ルチアの方に意味ありげなまなざしを向けたのをルチアは見逃さなかった。
 
 ◇ ◇ ◇
 
 王宮の庭に集まった国民の祝福を受け、さらには貴族達との宴が続く。ルチアが部屋に引き上げた時には、日付も変わってしまっていた。
 
 侍女達の手を借りて入浴をすませ、透けるような薄い寝間着に身を包む。今夜、何が待ち受けているのかわかるから、そうする間も気持ちは落ち着かなかった。
 
 二組の新婚夫婦が寝室に引き上げた後も、宴はまだ続いているようだ。窓を閉じていても、歌い騒ぐ声がここまで聞こえてくる。

(クリストハルト様は、どうしてこんなに遅いのかしら)

 今夜からルチアとクリストハルトの寝室になると言われた部屋に入っても、まだクリストハルトは来なかった。

 どうしたらいいのかわからず、むやみやたらに部屋の中を歩き回る。そうしていたら、ようやく扉が開かれた。

「――ルチア、待たせた」

 ゆるりと入ってきたクリストハルトが、ルチアに微笑みかける。かと思ったら、勢いよく近づいてきた彼はぎゅううっとルチアを抱きしめた。

 身体に回された腕の力はとても強くて、頭がくらくらする。ルチアの方からも手をまわし返したら、頭の上から小さな声が聞こえてきた。

「何か、おっしゃいました?」
「ん? たいしたことではない」

 たいしたことではない、と言われると余計に気になる。ルチアはぎゅっと抱き着いたまま、彼の顔を見上げた。

「たいしたことではない、と言われたら気になるではありませんか」
「長かったな、と思っただけだ。ルチアと結婚しようと決めてから今日までずいぶんかかってしまった」

 思っていたのとは全然違う言葉が出てきたから、ルチアは何も言えなくなる。ただ、口を開いたり閉じたりしていたら、クリストハルトは上向けたままのルチアの顎を片手で押さえた。

ここまで来たら、次に何がくるのかはもうわかっている。与えられたキスの甘さと熱に、心までとけるような気がした。

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